旧優生保護法(1948~1996年)のもとで不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、聴覚障害のある大阪府の80代男性、70代の妻と知的障害のある近畿在住の女性(77)の計3人が国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟で大阪地裁は11月30日、訴えを棄却する一方、旧優生保護法は憲法に違反するとの判決を言い渡した。賠償請求は、手術から提訴まで20年の「除斥期間」が経過し消滅したとして、いずれも棄却した。
旧優生保護法をめぐる一連の訴訟では、神戸、大阪、東京、仙台など全国9地裁・支部で起こされ、今回が3件目の判決。 2019年5月の仙台地裁、2020年6月の東京地裁で判決が出ており、いずれも原告側の請求が棄却された。 旧優生保護法の違憲性を認めたのは仙台地裁判決に続き大阪地裁が2例目となる。
訴状によると、夫婦は、妻が妊娠9か月目の1974年5月、病院で胎児に異常があると言われ帝王切開を受けた際、知らぬ間に不妊手術を受けさせられた。胎児は死亡した。女性は15歳の時に日本脳炎を患って後遺症で知的障害になり、高校卒業後、母に連れられて入院、不妊手術を受けさせられたとしている。
夫婦は2019年1月、女性は2018年9月にそれぞれ提訴。 旧優生保護法は「子を産み育てるかどうかの自己決定権(リプロダクティブ・ライツ)を侵害した」などと訴えていた。強制不妊手術をめぐっては2019年4月、被害者に一時金320万円を一律支給する救済法が施行された。
仙台地裁判決は旧優生保護法が違憲と判断する一方、被害救済への立法措置を取らなかった国の賠償責任については、法的議論の蓄積がなかったなどとして否定し請求を棄却。東京地裁判決は30日の大阪地裁同様、手術から提訴までに、賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」が経過したとして請求を退けたが、東京地裁は旧優生保護法の違憲性には言及していない。