堺の名産品を使ったほうがいいのか、堺の名物をモチーフとした料理にするのか、和食・洋食・イタリアン・フレンチなど、悩みに悩んだ末、上司である堺保安署長から、「堺は千利休の出身地で、利休は“わびさび”という茶道の心を世に広めたことで有名だ」「“わびさび”から、わさびを活かした料理を使って利休ランチなんてどうだろう?」と、単なるダジャレとも受け止めかねないアドバイスが。千利休は、堺の商家に生まれており、わび茶の大成者として知られています。生涯の大半を堺で過ごし、かの豊臣秀吉に仕え、世に「天下一の茶の湯者」と称されました。その千利休が大切にした“わびさび”の心から、わさび……それを聞いた時に、一筋の光明を見いだせたのを感じ、即座に利休ランチを思いついたのです。
そして、今度はその「わさび」を活かした料理をどうしよう?と考えた時、私の得意料理である牛たたき丼におろしわさびの風味と刻みわさびの触感を活かしたわさびソースを使ってみようと思いました。デザートには、千利休といえば抹茶だろうと考え、抹茶を使用したわらびもちを使い、利休ランチが出来上がりました。
アピールポイントはなんといっても、わさびの食感と風味を利かせたソースと、肉自体についているポン酢の、さっぱりとした酸味と旨みのコラボレーションです。ソースはわさびのツンとした風味を利かせつつ、ほんのり甘めに仕上げていますので、少し酸味の利いた肉の味をより引き立たせます。また、肉は薄めに切ってあります。厚めに切ってしまうと、食べたときに噛む回数が増えて食べにくくなってしまいます。
ステイホームという生活スタイルは、2021年も進むと思います。そこで、料理のレパートリーが底を尽いてきた方々に、毎日の料理で新しいものを覚え、作ることは、なかなかに骨が折れる作業ですよね。でも少し工夫をすれば、今のレパートリーが広がっていきますよ。まず、主軸となる料理を考えます。例えば、カレーを主軸にするとしましょう。カレーは、ポトフにカレールーを足せば、深みがあるカレーになります。そのカレーは、ご飯と混ぜてオーブンで焼けば、カレードリアになりますよね。もう、これだけで3品。
今回使用した牛たたき肉は、一口大に切ればカレー等煮込み料理に使用できます。大きく切って焼けば、シンプルにステーキにもできます。パン粉をつけて揚げれば、牛カツにもなります。カツはカツでも牛肉なら牛カツ、豚肉なら豚カツ、鶏、ひき肉、魚、野菜と、メインの食材を変えるだけでも、料理の幅は無限大に広がっていきます。
新しいメニューを考える前に、一度作った料理を、食材の切り方や種類を変え、味を追加し、食材をプラスしてリメイクすれば、あれこれ考える手間が省け、調理工程の短縮、食費の節約などを考えるんです。そうするとレパートリーもいつの間にか増えてきますよ。
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