神戸のラジオ局・ラジオ関西の番組『モリユリのこころのメロディ』でパーソナリティーを務める、福音歌手の森祐理さん。最愛の家族の1人、弟が阪神・淡路大震災で犠牲に。その神戸の地で思いをこめて歌い続け、縁あって始まったラジオですが、実はその前に「生きる意味」を実感する、ある出来事が森さんの身にふりかかります。当時、そして、今の思いを、ご本人の「ことば」でつむぎます。
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ラジオ番組を始めるきっかけとなった出来事があります。それは一時的に「声」を失った経験でした。
振り返ると、各地を飛び回ってのコンサートに加え、2011年以降は東北に頻繁に出向いて支援コンサートをするようになりました。車で十時間以上の道のり、時には夜行バスで移動してすぐのコンサートという強行軍で、身体も声帯も疲労していたのだと思います。
それでも、「歌を聴いてもう少し生きてみようと思った」「地震でも津波でも泣かなかったのに、今日はじめて泣いて元気出てきた」などの声を聞くと、阪神・淡路大震災で犠牲になった弟の命が、まだつながっている気がして、歌い続けました。
2013年11月、風邪気味なのに無理して歌った後、ひと声も出なくなってしまったのです。歌どころか、「あ」という音声さえ出なくなり、12月のクリスマスコンサートはすべてキャンセルという事態になりました。1年で一番忙しいはずの師走、部屋に独りでいると、二度と歌えなくなったら……そんな不安が頭をグルグルと回ります。
でもある時、ふと気付いたのです。二度と歌えなくなっても、私という存在は変わらない。長年クリスチャン歌手として、神の愛を歌でお伝えする働きをしてきました。なのに、いつの間にか、華やかに人前で歌っているから、満足していた自分に気付いたのです。
人は何かできるから価値があるのでなく、存在そのものが尊いのだと、その時に深く思わされました。この社会を見ると、寝たきりの人、介護に明け暮れる人、孤独な人……、皆がそれぞれの重荷を抱えて懸命に生きています。そんな方々に私なりに何か届けることができれば……、そう強く願うようになったのです。
幸い年が明ける頃には声が回復し、歌えるようになってきました。でも新しい自分として、何か踏み出したいと切に祈るなかで、思いがけない出会いが与えられ、扉が開かれたのが、このラジオ番組でした。声を失う試練がなかったら今の番組もないと思うと、すべてに意味があるのだと、改めて思わされています。
モリユリ オフィシャルサイト
http://www.moriyuri.com/