■阪神・淡路大震災から26年、言わばポスト四半世紀に入った2020年、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るうこの時代、芸術のあり方が変わる
書道はエンターテインメントであるととらえています。コロナ禍で大きく変わったのは、デパートでの作品販売やイベントでの書道パフォーマンスの機会がなくなってしまったことです。そこで、オンラインを通して人の心を元気にするような書道活動を考えました。自粛期間はスマートフォンと向き合う時間が多いということを推測して、インスタグラムなどのSNSの投稿の頻度を上げ、ストーリーを活用してライブ指導にも挑戦しました。私は書道講師であり書道家でもあります。書道講師としては生徒の主体性が重視されるため、コロナ禍のオンライン授業では私は生徒を支えるコーチです。
それと同時に画面の前の受講生を楽しませるエンターテイナーの役割も求められます。書道家として、自らの発言と技法により、どうすれば画面前の方々を楽しませながら、書道講師として彼らの書道の能力を上げられるか、そのことを常に考える習慣がつきました。コロナが収束したら、オンラインに留まらず、対面の指導でも、書道講師として、そしてエンターテイナーとして生徒に書くことの楽しさを伝え、お稽古に来てくださった全ての方を幸せな気持ちにすることに全力で取り組んでいます。
■未来へ運びたい「書の素晴らしさ」とは?
音楽や美術などの書道以外の芸術分野にも共通していますが、書の最大の魅力は自分にしか生み出せない創作物を誕生させられることです。文字は誰一人と同じ物を書くことができません。その中で自身の文字を褒めてもらうことは、自分にしかできないことに対して評価をしてもらうことでもあります。「あなたがこの世に存在してくれて良かった」と誰かに思ってほしくて、自分にしか書けない作品、できない仕事、を今後も追及していきます。
◇繁本香菜(雅号・佳華) しげもと・かな 1996年4月・神戸市長田区生まれ。兵庫県立兵庫高校、奈良教育大学卒業。大学在学中に「書道教室」を開業。現在は中高一貫男子校の非常勤講師を務めながら、京阪神で7つの書道教室を展開、中国本場の書法をベースに、日本の書法と台湾の書法、主に三国の書法を指導している。