「1.17 祈りの朝 知らずとも、伝えてゆける」阪神・淡路大震災を知らない世代はいま(2) 能楽師・西尾 萌さん(西宮市・2000年生まれ) | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「1.17 祈りの朝 知らずとも、伝えてゆける」阪神・淡路大震災を知らない世代はいま(2)  能楽師・西尾 萌さん(西宮市・2000年生まれ)

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■能を本格的に世界へ 新作能に秘めた魅力を

新作能『マリーアントワネット』フランス・パリ公演(オペラ・コミック)〈※写真・西尾さん提供〉
新作能『マリーアントワネット』フランス・パリ公演(オペラ・コミック)〈※写真・西尾さん提供〉

 2019年10月、新作能『マリーアントワネット』フランス・パリ公演にマリーアントワネットの侍女役で出演させて頂きました。現地の方々が親しみやすい題材の作品でしたので、能の魅力に気付かれた方は多かったと思います。フランスの方々から、「同じ能面なのに、処刑台へ行く前のマリーアントワネットが泣いているように見えた」「マリーアントワネットの人間らしさが少ない動作の中で感じられた」という感想を頂きました。言語を越えて、日本人が大切に受け継いできた能の魅力が伝わった素晴らしい機会だったと感じています。

現代能「マリー・アントワネット」(2019年10月)パリ公演のパンフレット 
現代能「マリー・アントワネット」(2019年10月)パリ公演のパンフレット 

■多くを語らない能~withコロナ、その魅力の伝え方に大きな変化が

 世界を襲った新型コロナウイルス、能の公演をする機会が減り、表現方法が大きく変わりました。コロナ時代に対応して、YouTubeチャンネルで能について紹介されている能楽師の先生方も多くいらっしゃいます。私は、若い世代の方々にも能に興味を持って頂きたいと思い、Instagramを通して能の魅力を伝えています。大学の同級生が、「Instagramを見て萌ちゃんの能を観てみたくなった」と言ってもらえた時はとても嬉しかったです。「能が大好きな女子大生がいる、能ってどんなものなんだろう」、私がそのきっかけになりたいのです。オリンピック・パラリンピックや万博が日本で開催されるということは、世界中の方々が日本に注目される絶好の機会です。多くの方々に能に触れて頂けるように、柔軟な考えを持ち、新しいアイデアをどんどん生み出していきたいです。

大学では薬学を学ぶ西尾さん 医薬の神・少彦名神社(大阪・道修町「神農さん」)では巫女としても
大学では薬学を学ぶ西尾さん 医薬の神・少彦名神社(大阪・道修町「神農さん」)では巫女としても

 能は、多くを語りません。動きや台詞も必要最小限に抑えられています。多くを語らないがゆえ、その楽しみ方は観客の気持ち次第なのです。その日の自分の気分、出演している能楽師の演じ方、囃子方の音の奏で方などで、同じ作品でも毎回違ったテイストに感じます。これこそが素晴らしいところです。台詞の意味が分からないから、眠くなってしまうとよく耳にします。難しく考えず、この演目は何を伝えたいのだろうと、台詞の意味を想像すると能を観るのが楽しくなると思います。

■1.17 祈りの朝、「穏やかな日々を取り戻せますように」

「能楽師の演じ方、囃子方の奏で方にも注目を」同じ演目でも毎回、仕上がりは異なる
「能楽師の演じ方、囃子方の奏で方にも注目を」同じ演目でも毎回、仕上がりは異なる
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