西の比叡山と称される姫路の書写山・円教寺で千年以上続く「修正会(しゅしょうえ)・鬼追い会式」が18日、営まれた。
円教寺の鬼追いは、かつて夜通し行われていたことから、本殿・摩尼殿(まにでん)の扉が完全に閉じられた闇で僧侶が呪文(真言)を唱えるなか、ろうそくと松明の炎だけを頼りに書写山の鎮守、「若天(わかてん)」「乙天(おとてん)」と呼ばれる赤鬼と青鬼の舞が続く。今年は、新型コロナウイルスの感染に配慮して「密」にならない空間を確保するため、摩尼殿の扉はすべて開放され、緊急事態宣言再発令による政府の外出自粛の呼びかけもあり、円教寺へ来られない方々に向けてインターネットの動画サイト”YouTube”でもライブ配信された。
舞う鬼たちは円教寺を開いた平安中期の高僧・性空(しょうくう 910年~1007年)に仕えたとされる。このうち、青鬼は不動明王の化身で、悪霊を追い払う宝剣を握り、赤鬼は毘沙門天の化身で、槌を背負い、右手で鈴を鳴らし左手で松明を振りかざして火の粉を散らして四股を踏み、大地を浄めて五穀豊穣を祈る。同時に新型コロナウイルスの早期収束と阪神・淡路大震災犠牲者の冥福を祈願した。鬼の役は、書写山の麓に住む梅津家が担い、赤鬼役は父親から息子の代へ脈々と引き継がれている。
円教寺では18日、秘仏の如意輪観世音菩薩も開帳されたが、今年は内陣への立ち入りを制限し、例年、摩尼殿から参拝者に向けて撒かれる無病息災を祈祷した箸「鬼の箸」は、抽選で配るなどコロナ感染対策を施した「いつもとは違う」法要となった。大樹玄承・執事長は「千年以上、脈々と受け継がれてきた重要な儀式でもあり、コロナ禍で形を変えながらでも何とか続けたい、との思いでいっぱいです」と話す。
毎年訪れる姫路市の30代の男性は「いつもと違って扉が開き、陽が差す中での鬼の舞、しっかりと眼に焼き付けました。皆さん新型コロナウイルスの恐怖の中頑張っています。とにかく収束を祈りました」と話した。
また、初めて鬼追いを観た大阪市の40代の女性は「暗ければもっと松明の火も鮮やかに見えたかもしれませんが、迫力は十分でした。去年はステイホームが叫ばれ、家庭でじっくりと健康とは何か、生活のあり方とは何かを考える時間ができました。今年は赤鬼や青鬼に授かった力強さでコロナと向き合います」と気持ちを引き締めた。