東京五輪組織委・森会長発言に思う《2》「“老害”で片付けることなかれ 『ハダカの王様』にしたのは?」~弁護士・藤本尚道さん | ラジトピ ラジオ関西トピックス

東京五輪組織委・森会長発言に思う《2》「“老害”で片付けることなかれ 『ハダカの王様』にしたのは?」~弁護士・藤本尚道さん

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「女性がたくさん入っている理事会は(会議に)時間がかかる」。2月3日、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)による女性蔑視とも受け取れる発言、国内外で波紋が広がっている。IOC(国際オリンピック委員会)は9日、この発言を「完全に不適切だ」などと指摘する声明を発表した。IOCは2月4日の時点で「森会長は謝罪した。この問題は決着したと考えている」との声明を出していたが、世論や選手、協賛社の多くから非難の声が相次いだことを受けて立場を明確にした格好だが、ある意味「火消」とも言える。

 ここでIOCは森会長の進退問題には触れず「(社会的な)一体性、多様性、男女平等はIOCの活動に不可欠な要素。森会長の最近の発言はIOCの公約や(改革指針の)五輪アジェンダ2020に反している」とした。

日本オリンピックミュージアム(東京都新宿区)世界観、多様性を発信する「ウェルカムエリア」〈※2019年12月20日撮影〉

 森会長は発言への批判を受けた直後にいったんは会長職を辞任する意向を固めていたと明かしている。しかし組織委幹部らから慰留され踏みとどまったという。この問題発言を生みだした土壌は何だったのか、藤本尚道(まさみち)弁護士に聞いた。

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 まるで居酒屋での「オッサン談義」を地で行く森会長である。本人は「ここだけの話」だったのかも知れないが、感性があまりに古い、いわば「昭和の感覚」で、ここだけでなく、全世界から総スカンを喰らってしまった。

 2000年5月、当時日本の首相だった森会長がクリントン大統領との会談の際に、“How are you?”と言うべきところを“Who are you?”と言い間違えたとの逸話がある。森氏が“Who are you?”と尋ね、クリントン氏がユーモアを交えて“I'm Hillary's husband”と答えたところ、森会長がすかさず“Me too”と返したという笑い話である。

 この話は各メディアによって、まことしやかに報じられたが、実は世紀の「大誤報」であって、のちに毎日新聞の記者が自作のジョークであった事実を認めている。しかし、いまだにこれがジョークであることを知らず、本当の話だと信じている国民もまだまだ多いというから面白い。失言大魔王の森会長ならば、これくらいのことは言ってしまいそう…というのがベースにあるからだ。弁護士の立場で言えば、本当は森氏にとって「冤罪」で本人は「被害者」というべきなのだが、他方で「身から出た錆(さび)」との厳しい指摘もある。

森会長の発言「まるで居酒屋での“オッサン談義”」と藤本弁護士

 ただ、私はここで面白おかしく森会長の過去の「失言」を取り上げるつもりはない。森会長は今回、世界中から叩かれて大炎上したが、これを対岸の火事だと笑って済ませるのは大間違いである。森会長がこともあろうにJOCの臨時評議員会で、あのような「ここだけの話」をやってのけようと考えたのは、私たち日本人の社会にそれを受け入れる下地があるからではないのか。現に、今回の森会長の発言に若干の笑いが起きたと聞くが、逆にこれを諫めるような話は出なかったと言う。「評議員会で森会長の暴走を止められなかった出席者は同じ穴のムジナだ」との厳しい意見もあるが、これは慧眼(すぐれた眼力)だと思う。

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