神戸市須磨区の路上で女性が刃物で刺殺された強盗殺人事件は2月21日、未解決のまま18年を迎えた。
2003年2月21日・午後10時40分ごろ、神戸市須磨区横尾の市営地下鉄「妙法寺駅」の近くで仕事を終えて自宅に帰る途中だったパート従業員の寺田和子さん(当時44歳)が何者かに刃物で刺され死亡した。兵庫県警・須磨警察署捜査本部は、のべ約5万2700人の捜査員を動員しているが、犯人検挙には至っていない。
寺田さんの夫は、これまで犯罪被害者等基本法の成立や殺人事件などの時効をなくすための活動に力を注いできた。そして「未解決事件について捜査機関がこれまでのあり方を検証するべきだ」と訴え、18年間、「真実を知りたい、あの時、妻にいったい何があったのか」と問い続けている。
寺田さんがこれまでの18年を振り返った。「私の心の中には、あの時から『止まっている時間軸』とその後の『進んでいる時間軸』、この2つがあるんです。息子たちも独立し、“あすの会(全国犯罪被害者の会)”も、2018年6月3日をもって解散しました。殺人事件についての時効の撤廃もありましたね。18年、歴史を感じます。私はあの悔しさは忘れないし、犯罪によって家族の命を奪われた遺族は、一生この気持ちを背負い続けるのです。区切りなどありません」。寺田さんの心は18年間、この時間軸の中で揺れ動く。
■寺田さん「未解決事件の再検証」「刑事司法のあり方」問い続ける
寺田さんは“あすの会”解散後、関西の犯罪被害者らとともに『つなぐ会』を立ち上げた。代表理事を務め、最近の刑事司法のあり方にも疑問を呈している。「民意を司法に、という裁判員裁判が施行されて10年が過ぎましたが、ここ数年は、一審の裁判員裁判で死刑が言い渡され、二審で無期懲役になり、最高裁で確定するケースが多いですね。(2015年3月に)淡路島・洲本市で起きた5人殺害事件も、一審の裁判員裁判の死刑判決から一転、大阪高裁で無期懲役となり、(2021年1月に)これが確定しました。死刑制度の是非を問う以前に、裁判員のみなさんが懸命に下した決断が、そう簡単に変えられてしまうのかと思います」と述べ、不信感を募らせる司法ではいけないと警鐘を鳴らす。