境内には2001(平成13)年、「祈り・安らぎ・夢」と題した壁仏が奉納されている。「祈り・安らぎ・夢」は須磨寺の世界観にも通じる。
須磨寺では2007年、阪神・淡路大震災の十三回忌で、ネパールのチベット仏教僧院「ペマ・ツァール・サキャ」の僧侶6人が砂曼荼羅(すなまんだら)を制作して犠牲者を悼み、その後も続いた。
砂曼荼羅は仏教の宇宙観を表現した「曼荼羅」を、黒い板の上に砂だけで描いて表現したもの。直径約3メートルの円形で、下絵を描いて砂に天然の着色料で白・赤・黄・青・緑などに色付けした。
東日本大震災発生時にはネパールで国を挙げての慰霊が行われたが、そのネパールで2015年4月27日に大地震が発生。須磨寺では、その際に日本在住のネパールの方々の心のよりどころとなるよう、首都カトマンズにあるスワヤンプナート寺院を模した寺院風の「祈りの回廊」を建てるなど、災害復興と鎮魂への祈りを絶やさない。
震災発生翌年から被災地へボランティアに出かけている神戸市の50代の女性は「今年は新型コロナウイルスの影響で3.11を現地で迎えることができません。そこで須磨寺で発生時刻の午後2時46分に鐘を撞きに来ました。10年前は兵庫県からボランティア熱が上がり、たくさんの方々が被災地へ向かいました。阪神・淡路大震災の被災地・神戸に住む人は『他人事』では済まされないのです」と話した。