オンラインやリモート形式で会うことも、参加しにくい人が参加できるメリットはあるのだが、「負傷者と家族の会」はもともと、出欠確認も取らないし、コロナ禍で連絡が取れなくなってしまう可能性もある、そんな中、毎年皆で取り組む「空色の栞(しおり)」のリボン付けなど、どれぐらいの人たちが来られるか、そこは各人に委ねた。
昨年(2020年)は1回目の緊急事態宣言発令下で「脱線事故メモリアルウォーク」そのものが中止になったが、ことしは関係者のみ約10人で、しかも短時間で福知山線沿線や事故現場を整備した慰霊施設「祈りの杜」、今年で最後となるダイコンの花でかたどった「命」の文字の花畑を巡った。「事故を忘れたくないよね。メンバーだけで、やはり歩きたいよね」シンプルにそう思ったから。そして祈りの杜での一体感は何よりも違う。いろんな意味で悲しみ、苦しみを共有してきた私たち。その方々と一緒に祈りを捧げ、安全・安心な社会を願うことが大切なのだと思う。
そして事故車両の保存のあり方、とりわけご遺族にとっては、「事故現場」と並んでデリケートなこと。事故の再発防止と風化を遅らせるため、加害企業のJR西日本はご遺族や負傷者に最後まで向き合う姿勢を見せてほしい。
メディアの方々から5年・10年・15年の節目で「何か言葉を」……コメントを問われることはあるが、事故から16年、100年に1度のパンデミックが押し寄せても関係ない。毎年の積み重ねこそが大事であり、「事故を風化させない」という決めつけではなく「風化を“緩める”」という気持ちで接している。
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脱線事故現場近くをめぐる恒例の「メモリアル・ウォーク」、去年(2020年)は1度目の緊急事態宣言が発令され、中止した。今年は4月中旬、会の関係者のみ約10人が集まった。今年はコースを変えた。あえて福知山線の列車が通過する線路沿いの小径を歩いた。どうしても同じ時間、同じ空間を共有したかった。「寄り添い」と「対話」。人間は1人で生きているのではない。互いに励まし合い、助け合う存在だ。今は少し距離を保ちながらも、何気ない一言に励まされ、救われる。そこに装飾や演技はいらない。オンラインでは受け取れない「温もり」を、三井さんはこれからも伝えて行く。