かつての関西屈指の洋菓子チェーン「パルナス製菓」(2000年営業終了)の流れをくみ、阪神電鉄・尼崎駅構内で48年間営業したカフェベーカリー「モンパルナス」が5月1日、大阪府豊中市の阪急宝塚線庄内駅近くに移転、オープンした。
モンパルナスは1974 (昭和49) 年、パルナス創業者の故・古角(こかど)松男さんの弟・伍一さんが阪神尼崎駅構内に開業。現在は伍一さんの長男、武司さん(61)が運営会社「パルナス商事」の社長を務めている。
2020年、世界中を襲った新型コロナウイルスの感染拡大で、店舗の客足が激減。同年4月からの1回目の緊急事態宣言下ではホームページなどで「存続が危うい、助けてほしい」と訴えた。一時的に注文が急増したが、コロナ第2波、第3波で人々の外出自粛に歯止めがかからず「爆発的な注文が何回も続くわけではなかった」という。売り上げの約3分の2を喫茶部門が占めていたモンパルナスにとって、客足が戻らないこと、そして何よりもテナント料の高さが大きな痛手となった。
古角社長は「尼崎に未練はあるし、このまま続けたかったのですが…。このままでは家賃が払えないどころか、会社が潰れてしまいかねない状況だったのです」と移転を決めた。大阪府豊中市の阪急電鉄・庄内駅からほど近い場所で再出発。喫茶コーナーは20席ほどに減らし、ピロシキなどのベーカリー部門に力を入れるという。折しも府内は3回目の緊急事態宣言下での船出だが、コロナが早期収束することを信じ、「くつろぎの空間」を提供する。新店舗の内装は、長男でインテリアデザイナーの尚也(なおや)さんが担当し、モスクワの雰囲気を醸し出すようにした。
コロナ禍で経済が落ち込み、個人消費も減少傾向にあるが、テイクアウトの強みも生かしたい。古角社長は「モスクワの味・ピロシキはウチの自慢。従業員全員を連れて庄内へ来ました。庄内の街はどことなく尼崎に似た庶民的なところがあります」と話す。庄内近辺にはかつて、パルナスの本社と工場があり、地元の人々からは「パルナスが帰ってきた」との声も上がっているという。