ところが、そこには明るい太陽と澄んだ空気と緑の大地が広がり、伝統歌の歌声が響き、親の仕事の手伝いや、(ウシ科の動物である)ヤクの世話をし、学校で学ぶことに喜びを見出し、キラキラと瞳を輝かす子どもたちがいる……そういう、素朴で大自然とともに暮らす村民たちが、幸せに暮らしていた。
けれども、学校には黒板もなければ満足な教材もなく、書くための紙も、風の侵入を防ぐために窓に貼ってある紙をはがして使わなくてはならないという状況だった。
それでも、子どもたちは学ぶことに対して意欲的で、「先生は未来に触れることができるから、将来は先生になることが夢」と語る子もいるほど。
村をあげて大歓迎された先生ウゲンも、だんだんと子どもたちと過ごす時間を愛おしく思えるようになってきた。そんな彼のもとへ届いた知らせ。彼の夢が叶うのか……?
ウゲン役のシェラップ・ドルジ、彼を村まで案内するミチェン役のウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ、村の娘セデュ役のケルドン・ハモ・グルンらは、オーディションで選ばれたそうだが、いずれも映画初出演。住んだ瞳がかわいい、学校のクラス委員のペム・ザム役は、実際にルナナで暮す9歳の少女ペム・ザムが演じているほか、多くの村人が俳優として参加している。
監督は写真家、作家としても活動しているブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ。これが長編映画デビュー作ながら、第31回パームスプリングス国際映画祭観客賞など多くの映画祭で評価され、今年の第93回アカデミー賞国際長編映画賞ブータン代表作品に選ばれるなど、これからが期待されている。
映画の中で、印象的に使われている伝統歌“ヤクに捧げる歌”。ここには、ブータン人の生活、人生、そのすべてが詰まっているという。長い体毛を持つウシ科の動物“ヤク”は、高地で暮らす人々にとって、家族でもあり財産でもあって、乳を使いチーズを作り、肉も食べ、毛で布地を織り、糞は着火剤になるという、まさになくてはならない大切な存在。
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