大阪市北区の雑居ビルにあるカラオケパブで経営者の女性(25)が殺害された事件で、殺人容疑で常連客の会社員の男(56・兵庫県西宮市)が、大阪府警・曽根崎署捜査本部に19日までに逮捕、送検された。
店のSNS(会員制交流サイト)によると、新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴い、店は午後8時まで営業時間を短縮。11日は営業日で、女性は事件直前まで店を閉める準備をしていたとみられる。捜査本部は男がビル内で別の女性従業員が退勤する姿を確認した後、再び女性がいる店内に戻り、犯行に及んだとみられる。
女性は14日午前、店の床に血まみれであおむけに倒れた状態で見つかった。関係者によると、事件前、女性は逮捕された常連客の男とみられる人物について「熱狂的に言い寄ってくるしつこい客がいる」「ひっきりなしに電話がくる」と、悩みを周囲に話していたという。
女性が店内で遺体で発見されて21日で1週間。事件現場のビル1階には、連日多くの花が手向けられている。
大阪市北区の別のエリアで、4月までバーを1人で切り盛りしていた20代の女性(大阪府豊中市)は、「他人事とは思えなくて、手を合わせに来ました。私がいた店も、女性がバーテンをするという珍しさもあって、常連客が多かったのですが、付きまとわれたりしたことはなかったです。でも新規のお客さんや、あまり知らない方だと不安になります。お客さんとの距離感の取り方は本当に難しいです。お酒と会話を楽しんでほしい場所なのに、恋愛感情を持ち込まれたのならば、被害者の女性も辛かったはず。そこ(殺害)までするような話なのか、腹立たしいです」と話した。この女性が営業していたバーは、緊急事態宣言での営業時短要請や酒類提供禁止で経営が苦しくなり5月の大型連休前に閉店した。現在は登録制の派遣社員として働いているという。
現場近くの天神橋筋商店街界隈で飲食店を経営する40代の男性は、かつて大阪・ミナミの歓楽街でガールズバーを経営していたことがあった。「夜の商売でよくあるのは、支払いをめぐるトラブル。その次に多いのは、店の従業員の女性に思い入れが強くなって、女性が困惑するケースです。女性の場合、多かれ少なかれ経験していますね。ただし商売である以上は、いかに多くのお客さんに『ひいき』になってもらうかは大事です。だから営業という形で、個人の連絡先を教えたりすることもありますが、私は一律、従業員には連絡先交換を禁じていました。その結果、本当にお店のファンになってくれて、なおかつ従業員の女性にも優しく接してくださるお客さんが増えました。商売のやり方はさまざまですが、大阪には多くのお店がひしめき合って、競争も激しく、なおかつコロナの影響で売り上げが落ち込む中、女性ばかりの店で執拗に迫るお客さんに毅然と対応するために、誰か相談できる目上の人、男性がいなかったのか、それが悔やまれますね」と事件があったビル5階を見上げた。