コロナ禍で特に打撃を受けた業種の1つが飲食店だが、そういったお店に酒類を提供する酒店も同様に苦難の時期を過ごしてきた。それでも、“おうち時間”での宅飲みが広がるなか、これまでと違った傾向も出ているようだ。
全国各地の地酒を中心に販売を行い、地酒の共同開発も担う、神戸市長田区の有限会社すみの酒店。新型コロナウイルス感染症の影響については、売り上げが9割減少した時期もあったという。
ただし、「阪神・淡路大震災のときも大変な思いをしたが、そのときと同じく、悪いことはずっとは続かないということで、少しずつ伸びてきている。トータルではコロナ前の7~8割まで戻ってきている」と話すのは、同社代表取締役の花畑悟郎さん。その要因として、「なんとか復活しようという力を感じる」と、飲食店の再興を挙げる。家飲みは増えても、主力取引先でもある飲食店の力の大きさを改めて実感しているようだ。
それでも、「コロナ禍で大きく変わった1つが、エンドユーザーの比率。全体の3割になり、飲食店が7割になった。この状況なので、外でお酒を飲む行為が現状、認められていない事情もあり、皆さんは自宅で飲む用のお酒を買っていかれることが非常に多くなった」と、個人で買い求めていく割合は確実に増えているとのこと。
「今までは一升瓶、1800mlのお酒が売れていたのが、今は720mlの四合瓶が、お客様のニーズに合っているということで、2割から3割程度までは売り上げが増えた」と、花畑さんは顧客のニーズの変化を感じている。
◆ニーズに対応しやすい酒店へ「提案力を磨いていきたい」
「50年ほど前から、全国のお酒で、しかも地元でしか販売されていないようなものを中心に集めて商売をさせていただいている」という、すみの酒店。その創業は、花畑さんの父の代。神戸・灘区などで大手メーカーの流通があるなか、特徴を出そうと、県外のお酒を品揃えしたことがきっかけで、今のスタイルにもつながっている。
店内には豊富な種類のお酒が揃い、その時季にあわせたものも。ひと月で3分の1が入れ替わり、地域の小規模店ながら多彩な需要にあうような工夫が施されている。また、地酒が保管された冷蔵庫もずらりと並ぶ。「入って右手にはマイナス5度で保管される冷蔵庫が2面、左側には毎週のように新しいお酒を並べている。来店されたとき、『今日のお酒は何かな』と、(店内の)5面の冷蔵庫を見て、その時の旬を感じていただけると思う」。新型コロナウイルスの感染症が流行する前は、週1回、北は北海道から、南は沖縄にまで出張し、地酒の手配や交渉、共同開発に関する話も行ってきた。日本全国から特長あるお酒を取り入れるべく、積極的に動いている。
※ラジオ関西『こうべしんきん三上公也の企業訪問』2021年7月27日放送回より
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