兵庫県三木市の山中で2020年4月、男性の遺体が見つかった事件で殺人・死体遺棄・生命身体加害略取罪に問われた元同僚の男2人の裁判員裁判が2日、神戸地裁で開かれ、検察側はそれぞれに懲役23年を求刑した。判決は9日。
起訴状によると、兵庫県稲美町の運搬業の男A(53)と高砂市のダンプ運転手の男B(54)は2020年4月19日夜、加古川市のダンプ運転手の男性(当時45)を小型トラックに乗せ、首にシートベルトを巻き付けて圧迫し殺害し、遺体を三木市別所町の山中に棄てたとされる。
2人は被害者の男性が差出人不明の嫌がらせや愚弄(ぐろう=さげすみ、からかうこと)するメールを一方的に送り続けてきたと勘違いしていた。 男性本人に白状させるために呼び出して連れ去り問いただしたが、男性はこれを否定したため、2人は男性の頭部などをくいや金づちで殴った後、このうち被告Aがシートベルトで男性の首を絞めて殺害した。公判では、嫌がらせのメールが、実は被告Bの交際相手の女性からだったことが判明した。
検察側は論告で、男性を連れ出して最初にくいや金づちで殴ったこと自体が「生命に危険をもたらす」「死んでもかまわない」と認識できたと指摘した。その後、被告Aが男性の首をシートベルトで絞めているところを被告Bが目にしており、2人の意思が通じ合った殺害行為だと述べた。そして、殺意は突発的に起こったとしても、長期間の刑に処すべきだとして、それぞれに懲役23年を求刑した。一方弁護側は、いずれも殺意はなく、殺人罪の共謀関係を否定、傷害致死罪にとどまると主張して結審した。
2日は被害者の男性の妻が意見陳述し「よくも何の関係のない夫の命を奪ったな、怒りが収まらない」と述べた。そして「(嫌がらせのメールを送っておらず)夫は2人に呼び出されてやってもないことを、認めないのは当然。浅はかすぎる行動であり、娘や息子、残された家族の悔しさは計り知れない」などと訴え、極刑を求めた。