米ソの対立が激化し、世界が全面核戦争の危機に瀕した「キューバ危機」。その舞台裏で繰り広げられた知られざる実話をもとに描かれた迫真のスパイ・サスペンス、映画「クーリエ:最高機密の運び屋」が9月23日(木・祝)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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史上、最も第三次世界大戦に近づいた13日間といわれたキューバ危機。その緊迫の13日間はロジャー・ドナルドソン監督、ケビン・コスナーがケネス・オドネル大統領補佐官を演じた『13デイズ』に描かれたが、その危機回避に大きな役割を果たしたのが、ソ連のGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官オレグ・ペンコフスキー大佐と、彼の情報を運んだ名もなき一人の男だったことは知らなかった。
「フルシチョフのような衝動的な男の手に、核のボタンがあるのは危険だ。クレムリンの動向を知らせるから、その情報を武器ではなく平和の礎にしてほしい」と、国を裏切り、西側に情報を届けようとしたペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)の申し出を受けたCIA(アメリカ中央情報局)とMI6(英国秘密情報部)。彼らが情報の“運び屋”として白羽の矢を立てたのは、チェコやハンガリーなどに顧客を持ち、工業製品を売り込むセールスマンのグレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)だ。まさか誰も、普通のセールスマンがスパイだなんて思わない!
そういえば、クリント・イーストウッドが監督・主演した映画『運び屋』(2018)。90歳代のアール・ストーンが「車の運転をするだけでいい」と言われ、メキシコの麻薬カルテルに運び屋として利用されてしまうという、実話をもとにした映画があったが、世の中も、警察も、「まさか90のジジイがそんなことをやるわけがない」という思い込みを見事に逆手に取った人選だったわけだ。
今作のウィンも、まさにそんな「英国人のただのセールスマンが、スパイの真似事などできるわけがない」との思い込みの裏をかいて選ばれた“クーリエ”(運び屋)だ。
彼をリクルートしに来たのは、CIAのエミリー・ドノヴァン(レイチェル・ブロズナハン)とMI6のディッキー(アンガス・ライト)。
◆『クーリエ:最高機密の運び屋』
9月23日(木・祝)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給・宣伝:キノフィルムズ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、メラーブ・ニニッゼ、レイチェル・ブロズナハン、ジェシー・バックリー
監督:ドミニク・クック
2021年|イギリス・アメリカ合作|英語・ロシア語|カラー|スコープサイズ|5.1ch|112分|原題:THE COURIER|G
提供:木下グループ
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