昭和14(1939)年に創業し、今年で83年目。神戸で生まれ、神戸で育ったあられの老舗『神戸元町花見屋』は数多くの老舗が立ち並ぶ町・神戸元町にあって、古くから地元の神戸っ子、居留地の外国人、そして観光客に愛され続ける店の1つだ。
店の“看板娘”こと有限会社花見屋取締役の田中千晶さんは三代目。祖父の代から受け継ぐ伝統の味を守り続ける。例えば、看板商品の1つ「浮世あられ」は国産優良もち米を使用し、素材を活かすことを大切にしている。「なるべく機械化せず、熟練の職人が昔ながらの道具を使って丁寧に焼き上げる。天日干しの工程があり、季節や天候によって生地の固さ・乾き具合も変わるため、塩加減やしょうゆの濃さも日々調整している」と話す。
さらに、あられやおかきは湿気と温度が大きく影響する繊細なもの。そのため、花見屋では365日休むことなく店を開け、品質管理には細心の注意を欠かさない。
当然、時代の流れに合わせた工夫やアイデアも凝らしてきた。定番のおかき、あられ、せんべいを大事にしつつ、旬の国産食材を使った新しい味を開発。最近ではサツマイモをスライスしておかきの機械で焼いた商品のほか、おかき屋ならではの製法で薄く焼き上げたかりんとうに、砕いたピーナッツをまぶしたものも。香ばしく絶妙な歯ごたえが魅力だ。
今では、どれも素材にこだわった80種類以上のあられ、せんべい、おつまみ、菓子、珍味を量り売りで販売。不動の人気ナンバーワンは、約40種のあられなどをミックスした「お好あられ」。店頭にはレトロ感たっぷりのショーケースにおかきが並び、眺めているだけでも楽しい。親子三代で買い物に訪れる常連客も多いという。
そんな老舗も、コロナ禍で大きな影響を受けている。商店街の人通りは減少し、イベントや行事がなくなったため手土産や贈答品としての利用も激減。また、自宅用の個包装商品が増え、家族みんなでおかきやあられをつまむ団らんの時間を作ることも困難になった。
それでも田中さんは「創業当時から変わらない、昔ながらの手づくりの味、お客様に愛される味をこれからも届けていきたい」と前を向く。一部の商品はネット通販での購入も可能だが、ぜひ店を訪ね、おかきを選びながら香ばしさを醸し出すい老舗の雰囲気も楽しみたい。(嵐みずえ)
※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオ・DE・しょー!』2021年9月22日放送回、「魅力満載!海峡通信」より
◆有限会社花見屋 「神戸元町 花見屋」
神戸市中央区元町通2丁目6-6
電話 078-331-0873
【公式HP】