兵庫県には、文化庁が認定した「日本遺産」が9件、国指定史跡のお城が22城あり、いずれも全国最多を誇る。また、1000を超す城跡や播磨国風土記など、個性豊かな地域遺産を数多く有している。そうした兵庫の歴史を学びながら、周辺のおすすめスポットを計15回のシリーズで紹介する。
【第9回】伊丹諸白(もろはく)と灘の生一本
「伊丹諸白」「丹醸」とは、江戸時代初期「清酒発祥の地」を自負する「伊丹の日本酒」を崇めた言葉だ。伊丹の清酒は、大坂の池田とともに「下り酒」として江戸で評判を呼び、元禄時代にピークを迎えた。やがて樽廻船の発達に従い、港の近さや宮水の発見、寒風の六甲おろし、南麓での水車精米などがそろう好条件から、大産地は内陸から海岸沿いの「灘五郷」へと移る。
伊丹や西宮を含む西摂津一帯は、酒造りの職人集団・丹波杜氏の居住地や酒造好適米産地の北播磨にも近い上、昭和に入ると、今に続く酒米の王様「山田錦」まで生まれ、質・量とも日本一を誇った。伊丹には、現存する日本最古の酒蔵「旧岡田家住宅」や「清酒発祥の地碑」が伝統を誇る。
「清酒発祥の地」伊丹市の鴻池に、清酒の記念碑が立っている。碑文などから「酒造によって財をなした鴻池家の初代・新六幸元(しんろく・ゆきもと)は、出雲の尼子氏再興に命を懸けながらも果たせなかった山中鹿之介の子」で、「鴻池家が初めて清酒諸白を製造し、江戸まで出荷した」としている。清酒発祥については、池田や奈良も主張しているが、「濁り酒」ではない「澄み酒」を生んだとする伊丹の伝承だ。
江戸では、上方の諸産物が「下り物」として好まれ、「下り酒」は特に喜ばれた。品質が劣る際に今も使われる「下らない」という言葉は、その逆だ。伊丹の酒は、麹と掛米の両方に精白米を惜しみなく使ったことから「伊丹諸白」と呼ばれて珍重された。
やがて江戸後期に差し掛かると、伊丹から清酒造りを導入した西宮と灘の酒蔵が、“六甲山の恵み”を得て、台頭していく。
■沢の鶴資料館
兵庫県神戸市灘区大石南町1丁目29番1号
電話 078-882-7788
営業時間 10:00~16:00
休館日 水曜、盆休み、年末年始
【公式HP】
【兵庫県公式観光サイトHYOGO!ナビ】
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「歴パ!ひょうご地域遺産バトンリレー」アーカイブ記事
◆『歴パ!ひょうごの地域遺産バトンリレー』 2021年10月9日放送分