近年は世界中で観光資源としての灯台の価値を改めて見直し、活用していこうとする動きもあるが、折しものコロナ禍、2021年も日本各地の灯台の一般公開が新型コロナウイルス感染防止のため中止に。灯台ファンにとっては寂しい季節となった。
全国的に、コロナ感染拡大第5波は収束か?というムードが少し広がる秋。「本来、灯台は密になることもない場所。お近くに灯台がある方はぜひ灯台でリフレッシュしてほしいですよね!」と呼び掛ける『灯台女子』がいる。
不動まゆうさん。灯台の魅力を多くの人に知ってもらうため、「灯台女子」として2014年から始めた自費出版のフリーペーパー『灯台どうだい?』の編集発行人を務める。好きが転じて灯台の魅力や文化的価値をメディアで訴え、100年後の海にも美しい灯台を残すことを目指している。そして2021年、灯台マニアとして、ついに灯台の楽しみ方を解説するバイブルを出版した。『愛しの灯台100』(書肆侃侃房/しょしかんかんぼう 刊・定価:本体1,900円+税) 。「きっと会いに行きたくなる日本全国の灯台」をわかりやすく伝える。
これまでに訪れて、まぶたの裏に焼き付けた各地の灯台の姿に救われているという不動さん。「愛しの灯台100」、執筆には約10か月かかった。一番大変だったのは、3000基以上あるとされている日本全国の灯台から100基を選ぶことだった。
本当は紹介したかったのに、良い写真が撮れていないなどの理由で掲載しなかった灯台もある。通常ならば再度、撮影に訪れたかったが、コロナ禍で自由に移動できない中、自粛せざるを得なかったという。
2年目となるコロナ禍、フリーペーパー「灯台どうだい?」も、発行が遅れている。取材する立場として、やはり動き方が難しいのだ。
灯台ファンの方々に喜んでもらいたい、そのために様々な特集記事を考えるが現地に足を踏み入れるのは、このコロナ禍、やはり躊躇(ためら)ってしまう。
「みんな我慢しているのに、私が取材という名目で灯台に行ってもいいとは思えませんし、私自身も自分の体、家族の健康がとても大切」と話す。そのため、いまも次号の記事のネタに悩んでいる。
「密になりにくい」灯台とそれを取り巻く空間、リフレッシュするためにはどうすればいいのだろうか?
「全国的に緊急事態宣言が解除され1か月。内部を見学できる灯台や、灯台記念日の特別企画として一般公開する灯台もあると思います。いつもに比べて少ないと思いますが…。そこで内部に入ることを目的とせず、好きな灯台を訪れて、灯台フィールドワークをしては」とアドバイスする。
「いつ・誰が・どんな目的(対象となる船・航路)で建てた灯台なのか、歴史的に深掘りしていくのです。図書館や公文書館で、歴史的資料や新聞記事を探して、灯台の歴史ミステリーに迫るのは知的好奇心が刺激されてとっても面白いです」。
事前に情報収集をするのはおっくう、という人も、『愛しの灯台100』を読めば、記載されている灯台のコンパクトな情報をインプットできる。「会いに行きたい、優しい海の守護神に」そんな気持ちに応えてくれる一冊だ。