神戸出身の学芸員・宇代貴文さんは「焼き討ちをテーマにした展示はいままでになかった。戦火を逃れた仏像、その様子を描いた絵巻、延暦寺復興に絡んだ秀吉、家康に関する資料を通して歴史を感じて欲しい。焼き討ち自体は悲しい出来事だったが、秀吉、家康の尽力によって復興した様子を見て取れる。単に悲劇としてとらえるのではなく、長い目で見ると、決して悪いことばかりではなかった。歴史とはそういうものだ、と思っていただける」と解説する。
宇代さんの故郷、港町神戸の六甲山からは神戸港や阪神間、明石海峡を見渡せる。かつて京の都を守護した比叡山からは京都御所や琵琶湖畔が見渡せる。宇代さんは「山は、それぞれに特徴があるが、荘厳で静寂さが漂う神聖なもの。コロナ禍で日常が取り戻せない中、少しだけ心を落ち着かせて、山そのものを感じる心の余裕を持っていただければ」と話す。
《特別展「戦国と比叡~信長の焼き討ちから比叡復興へ~」》
3部構成。重要文化財6件を含む約60件を展示(現在は後期展示) 12月5日まで。
◇時間:午前8時半~午後4時半(12月は午前9時~午後4時)
◇料金:大人500円、中学・高校生300円、小学生100円(特別拝観含む。通常の巡拝券は別途必要)
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■「僧侶にとって一生に一度の聖域」延暦寺・戒壇院、内部初公開
延暦寺では、伝教大師・最澄の1200年大遠忌を迎え、827年の創建以来、一度も公開したことのない「戒壇院(かいだんいん、重要文化財)」と「法華総持院(ほっけそうじいん)東塔」の特別拝観を実施している。