「ポールならどうする?歌詞の続きが思いつかない」(ジョージ)
「頭に浮かんだものでいい」(ポール)
「カリフラワーみたいに、とか」(ジョン)
曲づくりは、アイデアを出し合いながらその場で演奏し、そのあとまた意見を出し合って修正し、ベストな選択を探っていくのですが、メンバー同士のノリが合わないときもあって、衝突する場面もそのまま映像に記録されています。
一方、メンバーがぴったりとまとまって互いに次々と新しい提案をしてびっくりする早さで曲が完成していく様子も描かれています。
またこの現場で、メンバーがどんな雑談をしたのか、どんな思い出話をしたのかも聞けます。リハーサルの最中にふざけて、彼らが10代のアマチュアの頃に作った曲を急にノリで歌って大はしゃぎするシーンも収められています。
このゲット・バック・セッションは、文字通り“Get Back(原点に戻ること)”を狙いとし、その先にライブ活動を再開するのが目標でした。
その背景として、▼マネージャーのブライアンが他界し、そのあとポールが主導してバンド活動を続けてきたこと、▼ジョンがオノ・ヨーコとの活動を重視し、ビートルズの枠組みを取っ払った活動を行なうようになったこと、▼アルバム『ザ・ビートルズ』制作中にリンゴが一時脱退したこと、以上が挙げられるそうです。
当時、グループのリーダー的存在だったジョンの気持ちが徐々に離れつつあったのをポールは肌で感じていたそうです。
セッションを見ていて印象的なのは、ポールのモチベーションです。ジョンのクリエイティブ力をひきだそうと全力を尽くしているのがよく分かります。
「Get Back」はポールが作り上げた曲で、できあがるまでメンバーが演奏を繰り返す場面が何度も出てきます。完成した歌詞に登場するジョジョとロレッタは、ジョンとヨーコを指していると言われていて、「戻ってこい!」とジョンにバンドの活動へ集中するよう促している、とされます。また、もともと彼らがこの曲にあてた歌詞は国の移民政策を皮肉る内容だったのが今作の映像で明確にされていて、興味深いです。