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■「印象、記憶…ダイレクトに表す漢字一文字の魅力」公益財団法人・日本漢字能力検定協会 代表理事 理事長・山崎信夫さん
4回目の「金」。オリンピック・パラリンピックの開催ごとに選ばれています。2000年のシドニー、2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロ、そして東京。 ただ、今年は少し位置づけが違うような気がします。自国開催のオリンピックで「金」じゃなければ、いつが「金」なのか・・・。票は大きく割れたものの、考えさせられます。2位が「輪」1位の「金」とは本当にわずかな差だったんです(1 位と 2 位の差は 118 票で過去最少)。
3位に「楽」、”楽しい”という意味でランクイン。「今年の漢字」の募集は毎年11月に始まりますから、2021年でいうと緊急事態宣言が解除されて、世間全般に少し落ち着いたころになります。「変」や「新」が浮上したのは、コロナ禍での”新しい生活様式”を意識した、変わる、新たな、という気持ちの表われでしょうか。
昨年(2020年)のトップ20の漢字のうち、「耐」「病」「禍」「密」「苦」などコロナ禍を象徴する漢字が引き続きランクインしていますが、ワクチン接種が進み感染者数がいったん落ち着いてきたこともあり、「菌」「疫」「粛」「離」などの漢字に代わって、昨年は見られなかった「楽」「希」「明」といった明るいイメージを持つ漢字が上位に並んだのは特徴的です。なお、「翔」「明」は、今回 27 回目にして初めてトップ 20 に入りました。
去年は「密」、非常にわかりやすいものでした。漢字一文字は願望を表す側面もあるのでしょう。2021年を振り返るに、日本の選手の金メダルラッシュという印象とともに、コロナ禍の自粛した生活から輝かしい未来のために「金の輝き」に思いを込めたのではないかと思います。