南太平洋・トンガ沖で15日に起きた海底火山の噴火に伴い、気象庁は16日未明に鹿児島県の奄美群島・トカラ列島や岩手県に津波警報を、太平洋側全域を中心に津波注意報を発表した。
各地で津波を観測。 気象庁によると、潮位は15日夜から16日にかけて各地で相次ぎ上昇し、 ▼奄美市小湊1.2メートル▼岩手県・久慈港1.1メートル、▼東京・小笠原諸島の父島、和歌山県串本町、高知県土佐清水市などでは90センチが観測された。
全国8県で最大約22万9千人が避難指示の対象となり、漁船の転覆や鉄道の運休など被害や影響が広がった。
警報と注意報は約14時間後の16日午後2時までに全て解除された。気象庁は今後しばらく、多少の海面変動が継続する可能性があるものの、災害の恐れはないとしている。海中での作業や釣りなどのレジャーに注意を呼び掛けている。
未知のメカニズムによる突然の潮位上昇で、日本列島各地では厳寒の真夜中、住民が次々と高台へ避難した。
2050年までに発生の確率が70~80%と予測される南海トラフ巨大地震の警戒地域では漁船転覆などが起きた。東日本大震災の被災地では「当時を思い出す」と不安が広がった。
津波注意報は和歌山県や高知県の沿岸部にも発令された。住民たちは寒くて真っ暗な夜道の避難を迫られた。大きな被害はないことがわかり、安堵の表情に。懸念される南海トラフへの備えが生きたとして、気を引き締め直す姿もあった。
気象庁によると、気象衛星「ひまわり」が観測した海底火山爆発(噴火)の噴煙は、高度約1万6000メートルまで達したという。噴火で空気が強く振動する「空振(くうしん)」が起き、噴火口から広がって海水や気圧の変動を起こした可能性が高く、この時に生じた衝撃波のため海水が圧迫され、津波が生じたとの分析もある。
地質や地震メカニズムを研究する「はりま地盤・地震研究会」代表・西影裕一さん(日本地震学会会員)は、「津波といえば、地震によって引き起こされるもの」との考え方が覆されたと話す。そして「地震による津波は、周期が10~60分間と比較的長いが、今回の津波の周期は5~10分間と短く、津波が予測しない急な速さで何回も押し寄せたとされている。今回の津波発生のメカニズムについて、詳細はまだわかっていないが、観測史上例のない規模の海底火山噴火によって起きた津波への警戒のあり方を問うべき」と指摘、津波を起こすあらゆる原因を想定し、さらに防災への意識を高める必要があるとした。