兵庫県尼崎市で2020年11月、特定抗争指定暴力団「神戸山口組」系組長らを銃撃したとして、殺人未遂・銃刀法違反の罪に問われた特定抗争指定暴力団「六代目山口組」系組員2人の判決公判で、神戸地裁は19日、いずれも懲役18年を言い渡した。
「六代目山口組」系組員A(53)とB(55)は2020年11月3日午前11時半すぎ、尼崎市内の路上で、神戸山口組系組長と組員に拳銃で弾丸計3発を発射して命中させ、それぞれ太ももと左手に重傷を負わせたとされる。
2人はいずれも殺人未遂罪について「殺意は全くなかった。発砲は威嚇に過ぎない」などと否認。弁護側は、殺人未遂ではなく傷害罪にとどまるなどと主張していた。
検察側は「抗争状態にある中、2人は(警察の)捜査員を装って組長を呼び出すなど周到に準備された計画性の高い犯行で、住宅街での犯行だったため、一般人を巻き込む危険性もあった」と悪質性を指摘、懲役20年を求刑していた。
判決で神戸地裁は「人の身体を貫く威力を有する殺傷能力が極めて高い拳銃を用いた」点を挙げ、狙った場所が頭部や胸部ではないものの、太ももに向けて弾丸を発射することは、出血多量によって死亡させる危険性を有する」と述べた。そのうえで「相手を死亡させる危険性があることを認識していなかったとは考え難い」として殺意があったとした。さらに「AはBを実行犯として、所属する組織に敵対する者に対して殺傷することもいとわない暴力団特有の発想が見て取れる」と指摘した。
この裁判は暴力団同士の抗争事件であることを考慮し、検察側の要請が認められ裁判員裁判の対象から外れた。裁判員法は、裁判員やその家族に危害が及ぶ恐れがある場合、公判を裁判官のみで行うとしている。
特定抗争指定暴力団「六代目山口組」と「神戸山口組」をめぐっては、2019年に起きた一連の抗争事件で神戸市の殺人未遂事件と、尼崎市の射殺事件が裁判員裁判の対象から外れた。