人にはさまざまな「癒し」があります。今回はその1つ「ASMR」について、普段はラジオを陰で支えている技術スタッフが、ラジオ番組のなかで解説しました。
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数年前から「ASMR」という言葉を聞くようになりました。これは、人が聴覚や視覚を刺激されて、心地よく感じたり、癒されたり、または、ぞわぞわしたりするような感覚のことです。YouTubeにも、ASMR動画と呼ばれるものがたくさんアップされています。どのような動画かというと、焚火や耳かきの音、咀嚼音、まな板で食材を切る音、などなど。「癒し」を連想させるヒーリングミュージックや環境音ではなく、ピンポイントな1つの「音」によって感じられる感覚のことです。
ASMRとは、英語で「Autonomous Sensory Meridian Response」。直訳すると、「自律感覚絶頂反応(じりつかんかくぜっちょうはんのう)」となります。実際に癒し効果があるのかどうかは個人差があり、科学的な実証はなされていないようですが、Youtubeなどでは注目されています。ラジオの世界でも、ASMRをテーマにした番組を制作している局もあります。
ASMR動画は、視覚と一緒に楽しめますが、やはり、その音が重要なポイントです。スマホで撮影・録音するのは簡単ではありますが、小動物の鳴き声などの小さな音は、性能の良いマイクやレコーダーを使えば、人の脳をより刺激するリアルな音を録ることができます。
以前テーマとして取り上げた「フィールドレコーディング」にも使える、ZOOM社の「H1n」やTASCAM社の「DR-100MKIII」など、小型で高性能なハンディレコーダーや、スマホに接続できるマイクを使うのもおすすめ。また、小さな音を録るときは、音の出るものにできるだけ近づいて、周りの音が入らないようにしたり、マイクやレコーダーを固定して、本体の振動からのノイズが入らないように工夫すると効果的です。
また、ASMR動画には、「バイノーラル録音」と書かれたものがあります。人の頭の形をした「ダミーヘッドマイク」などを使って録音する方法です。ダミーヘッドマイクとは、人間の耳の奥にある鼓膜への音の届き方を再現し、より臨場感のある立体的な音が収録できるものです。VRの業界でもよく使われています。また通常の方法で録音した音を、音楽編集ソフトで立体音響のように疑似編集するという方法もあります。バイノーラル録音された音源は、イヤホンやヘッドホンで聞くことをお勧めします。
昨年末には、オーディオメーカーのfinalがASMR専用のイヤホン「COTSUBU for ASMR(コツブ フォー エイエスエムアール)」を発売しました。業界をはじめ、巷でも注目を浴びています。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』 2022年1月30日放送回より
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【放送音声】2022年1月30日放送回