警察庁は4日、神戸市北区の路上で2010年10月、 堤将太さん(当時16・高校2年)が刺殺された事件について、殺人罪で起訴された無職の男(29・当時17)の特定につながる情報提供者に捜査特別報奨金(公的懸賞金)の支払いを決定した。
対象者は1人で支払額は300万円。兵庫県警は情報提供者保護のため、提供者の詳細や報奨金受領の有無、提供した情報の内容は公表していない。
捜査関係者によると、男が「人を殺したことがある」と知人に打ち明けたという情報を2020年秋ごろに兵庫県警が入手、裏付け捜査を続け、2021年8月4日に逮捕した。
その後の捜査の進捗状況などを鑑み、1月28日に兵庫県警・種部滋康本部長が中村格 (いたる) 警察庁長官に支払いを申請、警察庁が4日に決定通知を出した。この日は犯人が逮捕されて半年となる。
報奨金制度は容疑者逮捕につながる有力な情報を提供した人に対して報奨金を支払う制度で、現在14事件が対象となっている。将太さん殺害事件は2012年12月7日に報奨金制度の対象となり、920件の情報提供があった。支払いは今回で7例目となる。
兵庫県警は「事件発生から10年以上が経過し、聞き込みなど”人からの捜査”が困難になる中、この制度によって犯人検挙に結びついたことで、制度が有効な捜査手法として活用されることを期待する」とコメントした。
男は2010年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区筑紫が丘の歩道上で、将太さんの頭や首などを折りたたみ式ナイフで刺して殺害したとして、1月28日、神戸地検が殺人罪で起訴した。
《未解決事件に対する公的懸賞金「捜査特別報奨金」制度》
未解決事件の情報を広く受けるために、国内で最初に懸賞金をかけて情報を求めたのは1989年11月4日発生の坂本堤弁護士一家殺害事件。この時は全国の弁護士の有志が支援団体を結成し、総額2000万円で情報提供を呼びかけた。これまでにも遺族や支援団体が賄う私的懸賞金は存在した。
公的懸賞金としての「捜査特別報奨金」制度は2007年に警察庁が創設した。事件解決に結びつく有力な情報の提供者に、検挙への度合いに応じて原則300万円を上限に報奨金を支払う。情報提供者が複数いる場合は、上限額の範囲内で貢献度に応じて分割される。ただし、情報を犯罪行為を通じて得た場合などは支払われず、情報提供者が匿名・警察関係者・容疑者本人や共犯者などの場合も対象外となる。