兵庫県明石市は、水上バイクの危険行為に対し、懲役刑を含む罰則を盛り込んだ条例制定を目指す。3月議会(2月21日開会)に条例案を提出することを16日、泉房穂市長が正式に表明した。
明石市によると、水上バイクの規制に関する条例で、市区町村が懲役刑を盛り込むのは全国初。シーズンとなる5月の大型連休までに公布、施行を目指す。
プレジャーボートなどとともに、「3密回避の屋外レジャー」として注目される水上バイク。その運転に必要な「特殊小型船舶操縦士免許」の全国での試験合格者は、コロナ禍以前では年間1万人台で推移していたが、コロナ禍の2020年度以降は毎年約2万2千人と倍増している(一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会調べ)。
明石市では、大蔵、林崎松江、藤江、江井ヶ島の各海岸(4か所)に設ける「遊泳者安全区域」での危険行為を想定。 これらの区域をブイで2重に囲み、遊泳者の安全を確保する。このブイを突破したうえで危険行為をした者を刑事告発の対象とする。
高性能の監視カメラを13台設置。条例に基づき、兵庫県警や海上保安庁の取り締まりを強化する体制を取り、「海の安全月間」である7月を中心に、水上オートバイなどのユーザーや海岸の利用者に対して、海の安全について啓発活動を行う。
2021年8月、明石市は林崎松江海岸、藤江海岸付近での水上オートバイの危険運転に対し、殺人未遂などの容疑で刑事告発(容疑者不詳)した。捜査関係者によると、すでに男が神戸海上保安部に出頭しており、事情聴取など裏付け捜査を進めているという。明石海峡では特に、水上バイクが漁船に接近するなどの危険運転が繰り返され、漁業関係者からも規制強化を求める声が挙がっている。
陸地(道路交通法)と違い、海上(小型船舶操縦者法など)での法整備は十分とは言えない。兵庫県の条例では罰金が最高20万円、刑法上の殺人未遂罪の罰則は懲役5年以上となっていて、大きな隔たりがあり、明石市は「時代遅れの海のルールを現状に適合させる必要がある」と判断した。
この中間を埋めるべく、明石市独自の条例案では6か月を上限とする懲役刑のほか、50万円以下の罰金を科す。懲役刑適用のハードルを下げることで抑止効果を高める狙い。これらの条件で昨秋から神戸地検と協議を進めていた。当初の市の提案では、地方自治法14条に則り、地方公共団体が条例で定める罰則規定で懲役の上限となる2年、罰金100万円だった。