南三陸町は震災後、海に近い土地をかさ上げするとともに、志津川湾には高さ8.7mの防潮堤の工事を進めた。津波が遡上してきたすぐそばの八幡川は、護岸も頑丈に大きく作られた。震災後、近くにできた復興のシンボルともされたプレハブの仮設商店街「南三陸さんさん商店街」は、建築家の隈研吾さんが設計したお洒落なデザインに建て替わり、今その隣では道の駅の建設が進んでいる。
震災当時、防災庁舎の隣に建っていた町役場や周辺の住宅も、そのほとんどが高台に移転した。慰霊碑に手をあわせていた人がつぶやいた。「町はきれいになったけれど、人の息遣いが聞こえなくなった」。
復旧・復興のなかで薄れていく生活感。災害に備え、町が生まれ変わるにつれ消えていく以前の暮らし。被災地では災害への備えとともに、どんな街づくりをすれば良いのか、よりよい形を求める住民の模索や葛藤が続いている。