今や、テニス界のレジェンドとなったビーナス、セリーナのウィリアムズ姉妹。彼女たちを育んだのは、父の壮大にして破天荒な計画だった…。今回は映画『ドリームプラン』を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
子育ては難しい。子どもを親の望み通りに育て上げることは難しいし、固有の人格を持つ子どもは、親が望むようには育ってくれないというのが普通なのではないか? 親も、こんな風な子になってほしいという願望はあったとしても、親が指導して理想の子に育て上げるなんてことができるとは、そもそも思ってもいないと思う。
ところがここに、我が子をテニスの世界で成功させようと考えた男がいる。テレビで、テニスプレーヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿を見て、その時はまだ子どもが誕生していないのにもかかわらず……だ。
リチャード・ウィリアムズ(ウィル・スミス)は、離婚した前妻との間に5人の子をもうけたが、離婚の際、親権を手放していた。1979年にオラシーン(アーンジャニュー・エリス)と再婚。その時彼女には、死別した前夫との間に3人の娘がいた。80年に生まれたビーナス(サナイヤ・シドニー)と81年に生まれたセリーナ(デミ・シングルトン)の姉3人は、オラシーンの連れ子だ。
一家は、ロサンゼルス南部のコンプトンで暮らしている。リチャードは警備員、オラシーンは看護婦として働き、5人の娘を養った。娘たちはみんな仲が良く、2番目の姉のイーシャは後に弁護士になり、ビーナスとセリーナの代理人としてビジネス面をサポートすることになる。(彼女はこの映画の製作総指揮も、ビーナス、セリーナと共に務めている)
娘をテニスの世界へと考えはしたものの、リチャードにはテニスの実戦経験などなかった。にもかかわらず、78ページに及ぶ「選手育成計画」ノートを作成。そのトレーニング計画に沿って、町の公営テニスコートで練習を進めた。すると、地元のストリート・ギャングたちが絡んでくる。コンプトンという町は、決して治安がいいとは言えず、リチャードは体を張って娘たちを守らなければならなかった。しかし彼らは、やがてその真剣な練習ぶりに感銘を受け、他のチンピラから娘たちを守ってくれるようになった。
『ドリームプラン』
2022年2月23日(水・祝)公開
製作:ウィル・スミス、ティモシー・ホワイト、トレバー・ホワイト、
セリーナ・ウィリアムズ、ビーナス・ウィリアムズ
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:ザック・ベイリン
撮影:ロバート・エルスウィット(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)
出演:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン、ジョン・バーンサル
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
【公式サイト】
※各劇場の上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。