【ピンチをチャンスに】社員がどんどんやめていく…ピンチを乗り越えた社長が描く新しい農業の形 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

【ピンチをチャンスに】社員がどんどんやめていく…ピンチを乗り越えた社長が描く新しい農業の形

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 試行錯誤しながらも地域のために、様々な取り組みにチャレンジする衣笠さんに訪れた最大のピンチは、第6次産業化に伴って経営を多角化したときのこと。多角化経営を行ったことで、従業員は最大40人まで増加。事業管理の負担も増え、利用客からのクレームも絶えず問題も山積みに。そんなとき、レストラン事業では看板シェフが、独立のために退職を願い出て、料理のできない社員とパート従業員のみが残される事態に発展した。

 そんな当時のことを、「正直ほっとしました」と振り返る衣笠さん。「料理のことは素人の自分が、今までの形態でレストランを経営していても、社員に任せきりになってしまうと思ったので。残された料理ができない社員とパート従業員で“できることだけ”を考えました。『そばを湯がいて、ネギを切ることなら彼らでもできるだろう』と、事態を前向きに捉えました」。

 当初は不安がっていた従業員たちであったが、「できることだけやろう! お客さまから、そば以外の要望があれば練習しよう」という衣笠さんの前向きさに追随するように、自らアイデアを出しては行動をするように。それにより、「お客さまから喜んでいただける機会も増えた」。

 その後、多角化した経営の“大改革”として事業整理を行い、売上の少ない商品の販売や、300件ほどの取引があった米の発送業務の打ち止めを決断。ただし、それにより、事務の仕事が簡素化したことで、残った従業員たちからまたもや退職を突きつけられることに。相手の意見を尊重し、「No!」とは言わない衣笠さんに再度ピンチが訪れたが、退職をせずに残ったシルバー人材をはじめとするスタッフの、できる範囲の内容に事務をさらに簡素化することで、事なきを得た。

「『人がどんどん辞めていくピンチ』を経験して、農業はどうしても人手が必要だと改めて感じました」と吐露する衣笠さんが、たどり着いたのは、『ICT農業』いう手法だ。「『ICT農業』では無人で畑を耕したり田植えをしたりすることが可能です。本来、田植えは熟練した技術が必要ですが、ICTの技術を活用することで、農業経験がない新入社員でも活躍してもらえるので、私自身にも余裕ができました」。

農業×ICTの取り組みとして、小型ドローンと無線操縦ヘリコプターでの「可変施肥」に取り組む(2021年7月)【写真提供=夢前夢工房】
小型ドローンで農地を上空から撮影。イネの葉の色を解析し、1メートル四方ごとの育ち具合を色で可視化。無線操縦ヘリで生長にあわせて肥料をまくことで収益アップと省力化をはかる。(2021年7月)【写真提供=夢前夢工房】

 ピンチがあったからこそ、新たな手法に挑み、「社員にも相談できるようになった」という衣笠さんだが、「自分は常にピンチだし、常にチャンスだと思っているので、天狗にはならず地域を元気にするために日々精進していきます」と気を引き締める。

 そんな衣笠さんは、毎年2月に開催される「世界遺産姫路城マラソン」のランナーや観客を喜ばせるため、菜の花を1000万本植えるプロジェクトも担う(※姫路城マラソンは今年度も中止)。本来3月~4月に満開になる菜の花を1月に咲かせることにも挑戦。不可能と思われることも断らないメンタリティーの強さも兼ね備える。

「みんなで話し合い、アイデアを出し、試行錯誤を繰り返すことでピンチをチャンスに変えられることが面白いんです。ランナーや観客の方にも喜んでもらえることがうれしく、やめられなくなってしまいました。地域や会社やお客さまのために、できることをできる範囲で行っていきたい」。衣笠さんはうれしそうに語る。

 昨年には、農業を始めるきっかけとなった衣笠さんの娘が入社。地域のために様々な取り組みにチャレンジする衣笠さんと、手堅く物事を進める息女との親子で、これからさらに同社を、地域を盛り上げる。

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