放送禁止歌にされるまでもなくレーベルから発売停止にされてしまった曲もあります。たとえば、やしきたかじんさんのデビュー曲「娼婦和子」(1971)。実に真面目なメッセージ性のある曲なんですが、テーマが近親相姦、売春だったので時代的に難しかったのかも……。
【橋本】 「ほんとの親に犯されて ほんとの親に売られたの」「ひらがなさえ読めない私」……聴いてるだけでしんどくなりそうな曲ですね。
【中将】 たかだか50年前にこんな曲が生まれる背景があったと思うと考えさせられますね。奇抜な曲なんだけど、高校時代は新聞記者に憧れて新聞部、晩年は社会派番組のMCとして活躍したたかじんさんらしいデビュー曲なのかもしれません。発売停止されなくても絶対放送禁止になってたでしょうが……。
ともあれ要注意歌謡曲指定制度は、単に下品だったり配慮にかけた曲も、社会問題について真剣に考えた曲も一緒くたに放送禁止にしてしまったので、一種の思考停止を生んでしまいました。これからももっとケースバイケースで、自由に表現について考えられる社会を作っていきたいですね。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2022年3月26日放送回より)