職場・学校・家庭と人生の様々な場面で思わぬ落とし穴に落ちることがあるもの。そんなときに、「このピンチをどうやって乗り越えればいいのか」、さらには「ピンチをチャンスに変えることができればいいのに」と誰もが一度は思ったことがあるはず。
ラジオ番組『ピンチのあとにチャンスあり!』(ラジオ関西)では、そんな幾多のピンチをそれぞれ逆転の発想、挑戦する姿勢で乗り越えてきた、ひょうご・関西の企業経営者たちにスポットを当て、逆転の発想、挑戦する姿勢を生み出すヒントを探った。
神戸市西区で農産物の小売・卸売を行うタベモノガタリ株式会社の代表取締役、竹下友里恵さん。SDGs(持続可能な開発目標)にも掲げられている、フードロス問題に挑む若き起業家で、『世界人口が毎日「おいしい!」で満たされた世界の実現』を目指している。「八百屋のタケシタ」という屋号で、見た目にこだわらない“規格不選別”でおいしい野菜や果物を仕入れ、主に駅ナカでの販売事業を展開。だが、ようやくお店にファンがつきはじめた頃に迎えたコロナ禍で売上は半減してしまう。そのとき、竹下さんがある行動をとる。
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タベモノガタリは、2019年2月、竹下さんが大学在学中に立ち上げた会社。社会問題を解決するビジネス=ソーシャルビジネスの登竜門コンテストといわれる「ユヌス&ユーソーシャルビジネスデザインコンテスト2018」に参加し、「ボーダレス・ジャパン賞」を受賞したことがきっかけになったという。
食べることが大好きな竹下さんにとって、食を仕事にすることは自然な流れだった。米をひと粒残さず食べることが当たり前の家庭環境で育った竹下さんは、高校時代でのカナダ留学で衝撃を受ける。なんと滞在先のホストファミリーがいとも簡単に食べ物を捨てていたのだ。竹下さんは、はじめ、これはカナダ特有のものだと考えていた。ところが、調べると、日本も年間万600万トンほどの食料を廃棄していることがわかった。
世界には食べられずに死んでいく人がいる一方で、食べ物が大量廃棄されている矛盾。この世界全体の問題をどうにかしたい。農学部だった竹下さんは、まずは規格外となって産地で大量廃棄されている農産物をなくすことから始めようと決めた。
そもそも規格外の農産物はどれほど出るのか。品種によって変わるというが、基本的に3割くらい、無農薬野菜となると7割くらいが規格外になってしまうという。規格の基準は厳しく、例えば、ブロッコリーだと直径が15センチ未満で上から見たときに房が真ん丸かどうかなど、重量や重さ、大きさなどの見た目が主に関係している。たとえ無農薬野菜で規格外の方が味はおいしかったとしても、形が違うからという理由で廃棄されてしまう。こうしたもったいない農産物を買い手につなぎ、ニーズの拡大に挑戦しているのが、竹下さんの会社、タベモノガタリだ。
「今となっては40軒くらいの農家さんから野菜や果物をいただいていますが、ゼロから1軒ずつ増やしていきました。訪問していくうちに、1人として同じ農業をされていないことがわかって。十人十色の農業への考え方に触れたり、作物を見たりするのが面白くて、苦になりませんでした」