拾った大金を自分のものにせず持ち主に返したことから、メディアで“美談の英雄”として拡散され、その後、人生が狂っていく――SNSで広まった噂に翻弄される男の運命をサスペンスとして描く、映画『英雄の証明』が4月1日(金)から全国で順次公開されます。
物語の舞台はイランの南西部、古代遺跡が数多く残る都市・シラーズ。主人公は刑務所の服役囚・ラヒムです。
イランの法律では借金をしてお金を返せない場合、保証人が訴えると懲役刑になり、刑務所へ入らなければならないそうです。また、こうした受刑者は休暇を取って何日か刑務所を出ていったん家族と過ごすことができる仕組みです。
ラヒムは、3年前に借金を返せなかったせいで服役していて、離婚を経験しました。借金の相手は別れた妻の兄です。金額は日本円でおよそ400万円。
ラヒムには今、ファルコンデという婚約者がいます。彼は刑務所から休暇を2日間もらい、一時的に釈放されました。
数日前、婚約者のファルコンデが偶然拾ったバッグに大量の金貨が入っていました。借金を返済すればすぐに出所できることもあり、ラヒムにとって神からの贈り物のように感じられました。ラヒムはこの金貨を元手に訴えを取り下げてもらおうと示談交渉をしますがうまくいきません。こうした中でラヒムは後ろめたさを感じ、バッグを持ち主に返すことにします。
この行動が、思いがけなく大反響を呼びます。
「テレビ局がお前を取材したいと言っている」(刑務所の幹部)
「金貨を数枚拾っただけですよ」(ラヒム)
「新聞社からも取材の申し込みが来てる」(刑務所の幹部)
「恐縮です」(ラヒム)
「謙遜するな、見上げた行動だ」(刑務所の幹部)