テレビや新聞から取材が殺到し、借金で刑務所にいるにも関わらず金貨を持ち主に返した“正直者の囚人”と、美談の英雄として祭り上げられます。インタビューで刑務所の所長らはラヒムを絶賛しました。
「彼はまじめで正義感にあふれ、頼りがいがある実直な男です」(刑務所の所長)
「彼は金銭的な苦労を抱えていましたが、人は欲望より善意を優先することを今回の行動で示しました」(刑務所の幹部)
ラヒムは刑務所から特別休暇を与えられ、チャリティー協会のイベントに出席し、称えられます。
「彼の崇高な行いに盛大な拍手を!」(司会者)
また会場で吃音症(きつおんしょう)の息子がしたスピーチが参加者の涙を誘い、寄付金がおよそ90万円も集まります。
さらに協会から、出所後の就職先を紹介されました。一方、ラヒムに金を貸した義兄はまるで悪徳債権者のように見られ、不機嫌です。
新しい就職先をラヒムが訪ねると、人事担当者が意外なことを言いました。
「金貨を返した証拠は?」