20世紀後半のアートの変革 「ミニマル/コンセプチュアル」展 兵庫県立美術館 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

20世紀後半のアートの変革 「ミニマル/コンセプチュアル」展 兵庫県立美術館

LINEで送る

この記事の写真を見る(2枚)

「これってアート?」「はい。アートなんです」……。アートとは何か、その概念を覆す作品が集まった。1960年〜70年のミニマル・アートとコンセプチュアル・アートを主要な作品で振り返る特別展「ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」が、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開催されている。2022年5月29日(日)まで。

 ミニマル・アートとは、主に1960年代のアメリカで展開された美術の潮流で、最小限までギリギリに切り詰めた形態が特徴。工業用素材や既製品を用い、単純で幾何学的な形やその反復からなる作品を制作した。これに続いたのがコンセプチュアル・アートで、作品の元となる考え・アイデアを重視している。作家自身は「作品のコンセプト」を出し、その指示通りに、例えば第三者が制作することもある。

 ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻は、1967年、ドイツ・デュッセルドルフにギャラリーを開き、この時代の流れを紹介し、その作家たちの作品を収集した。会場には、フィッシャー夫妻のコレクションや作品作りについてのやり取りを記した書簡、フィッシャー・ギャラリーで展示された当時の写真など貴重な資料が並ぶ。

 例えば、アメリカの作家がフィッシャー・ギャラリーで作品を展示しようとする。売れる前の作家であるならその輸送費も大きい。しかし、「この作品はこんな素材で、このサイズで、こんなふうにして」と作品のコンセプトだけを送り、現地で別の人がその通りになるように作業を行う。そして、できあがったものが「作品」となる。

 ミニマル・アートの代表的な作家であるソル・ルウィットの『ストラクチャー(正方形として1,2,3,4,5)』は、1つの透明な立方体のユニットを2×2×2、3×3×3……5×5×5と数列の連続性という単純な規則に基づいて連続的に並べることによって、視覚的に複雑に見せている。完成した作品よりも構成の規則となるコンセプトを重視していて、コンセプチュアル・アートの立役者の1人とみなされている。

 アメリカに住むロバート・ライマンは、自身が「作品のアイデア」を持って赴き、ギャラリー近くの工房で制作した作品をフィッシャー・ギャラリーで展示した。フィッシャーは「アイデアを持った作家に来てもらい、その場で制作してもらう」ということをよく行っていたという。

 ブルース・ナウマンは日常の生活の中から制作のヒントを見つける作家。『コンラート・フィッシャーのための音に関する6つの問題』は、オープンリールのテープレコーダーで音が再生されているのだが、テープは離れたところに置いてある椅子に固定された鉛筆を経由して再生されている。ドローイングでは、6日間毎日変わる椅子の位置が示されているほか、再生される音もこの日はバイオリンの音、この日はバウンドするボールの音と、指示されている。会場ではそれに合わせて、毎日違う音を再生しているという。

 兵庫県立美術館の河田亜也子学芸員は、「1960年から70年はエネルギーにあふれ、凝り固まったものから抜け出そうというという時代だった。そのエネルギーを感じて欲しい」と述べている。


◆「ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」
会期 2022年3月26日(土)~5月29日(日)
会場 兵庫県立美術館 企画展示室
休館日 月曜
【兵庫県立美術館 公式HP】

LINEで送る

関連記事