「イカナゴのいる海」の再生を目指して 兵庫・淡路島の漁師が語る、地元の海の深刻な状況 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「イカナゴのいる海」の再生を目指して 兵庫・淡路島の漁師が語る、地元の海の深刻な状況

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 関西の朝の顔としてテレビなどで活躍する気象予報士・防災士の正木明がパーソナリティーを務めるラジオ番組『正木明の地球にいいこと』(ラジオ関西、月曜午後1時~。アシスタント:荻野恵美子)。2022年2月21日放送回では、淡路島の北西部にある漁協、育波浦漁業協同組合(兵庫県淡路市育波)の代表理事組合長を務める片山守さんがゲストで登場。イカナゴの生態や漁獲の現状、海の環境問題などを語った。

イカナゴ(写真提供:育波浦漁業協同組合)

 イカナゴといえば、その稚魚「シンコ」を調理した郷土料理「イカナゴのくぎ煮」が兵庫県内ではおなじみ。また、淡路島などの地域では成魚(親魚)である「フルセ」を調理し「フルセの佃煮」も親しまれている。

 イカナゴやシラスの船曳網漁業を40年ほど営む片山さん。「兵庫県では2隻の漁船で網を引く『船曳網漁業』というやり方で、イカナゴ漁を行っています。親魚は12月末から1月初旬にかけての寒気が入るタイミングで、海底の砂地に産卵した後、水温とともに成長し、ふ化したイカナゴは海中を漂いながら、播磨灘、大阪湾などに広がり、以前は紀伊水道でもとれていました」。暑さが苦手なイカナゴは温暖な海域では夏季に砂に潜って「夏眠」し、冬季にまた回遊するそうで、例年、その水温の下がっている時期にあたる1月後半から2月に「フルセ」の漁を、その後の2月末ごろから「シンコ」漁を行っていたという。

イカナゴ漁の様子(写真提供:JF兵庫漁連 SEAT-CLUB)
イカナゴ漁の様子(写真提供:JF兵庫漁連 SEAT-CLUB)

 しかし、近年、イカナゴの漁獲量の落ち込みが危機的状況に。「(これまでも)漁獲量が少なかった年もあったが、3年前から漁穫量が激減し、前年度対比では半分以下にまで落ち込んだ。その後、漁獲量が上がっていない」と、片山さんは深刻な状況を憂う。「イカナゴは年々、漁穫量が減り、資源も少なくなっているため、親魚はいるとはいえ、私たちのところで資源の確保をしなければいけません。そのため(近年は)禁漁や休漁などをより積極的に行っています」。

(写真提供:育波浦漁業協同組合)

 イカナゴがとれなくなった要因について、「気象の変化、温暖化などもあるとは思いますが、厳密にいろいろと水産試験センターなどに調査をしていただくと、プランクトンなどの(魚の)栄養源がなくなっていること(が問題)」だと語る片山さん。「見た目はきれいな海になっているのですが、中身は栄養のない海になっているんです」。イカナゴだけではなく、他の魚やノリなどの水産資源にも影響が出ていて、地域の漁業にとっては死活問題となっている。

「なんかせなあかん!」と危機感を抱く、片山さんをはじめとする漁業関係者。その対策として、片山さんらが所属する育波浦漁協では、十数年前から海を耕す作業、「海底耕耘(うん)」に着手。「海底に眠っている栄養を掘り起こしたり、硬くなっている土を柔らかくしたりしています」。また、淡路島の漁業関係者は栄養の多いため池の水を海に戻すなど、少しでも海に栄養源を入れようと、様々な取り組みを行っているという。

「漁業者がこのような取り組みを行っているということを一般の人にもご理解いただきたい」という片山さん。「イカナゴ(のいる世界)というのは海の基本だと思います。今はイカナゴだけでなく、他の魚も厳しい漁獲になっていますが、漁業者がやっと意識改革を行うことができてスタートラインに立ったなか、この状況をみんなで一緒になって考えていきたい」と述べるとともに、「これからも一般の人たちに少しでも多くのイカナゴを食べていただきたいですし、また他の海の魚もイカナゴを餌とし、増えていくことがベストだと思います」と、豊かな海の再生へ、片山さんは前を向いていた。

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