脱炭素シフトや燃料価格の高騰が、ガソリン業界の川下の経営を圧迫している。日本各地のガソリンスタンドもその一つだ。この難局をとのように乗り切ろうとしているのか、今回は、ENEOS特約店として兵庫県南西部を中心にサービスステーション(以下、SS)を展開する「株式会社ナカムラ」(本社:兵庫県姫路市)社長の中村正行氏に、昨今の経営環境と今後の生き残り策を聞いた。
─―業界を取り巻く環境は。
【中村正行氏(以下、中村氏)】脱炭素が叫ばれる時代になったので、ガソリンを扱う商売は長く続かないだろうという意見が大勢を占めている。自動車もハイブリッド車が普及し、電気自動車(EV)も増えつつある。
─―国内のEV化の流れをどう見る?
【中村氏】世界で、テスラを筆頭とする欧米の高級車メーカーや廉価な中国メーカーが先行する中、日本勢で実績を上げているのはまだ日産のみ。間もなくスバルとトヨタが市場投入するが、トヨタは当面、サブスクリプション(一定期間の定額料金利用)方式のみという。
日本が諸外国に比べて遅れてきた理由の一つが電池。材料のレアメタルを中国とロシアが握っており、今回の戦争でその値段が跳ね上がった。今も世界中のメーカーが取り合いしているので、しばらく車両価格は下がりそうにない。行政が盛んに購入補助金を出しているが、これを続けない限り普及は進みにくいだろう。
一方で、ガソリン価格がこれだけ高騰すると、国民が「これからはやはりEVだ」と言って、脱ガソリンに拍車がかかるという見方もある。
─そうなると事業環境はますます厳しくなる。
【中村氏】ガソリンに関しては、エネオスがe-fuel(イーフューエル)という次世代エネルギーの開発中。これは水素と二酸化炭素を合成してつくるもので、カーボンニュートラルに寄与すると大きな期待がかけられている。現行のガソリン車にそのまま給油できるので、製造技術が確立すれば普及も早いはず。
ただ、現状では価格が1リッター(リットル)700円程度と高く、それを100円台に下げるのに10年かかると言っている。その頃にはガソリンスタンドも激減しているだろうから、遅くとも5年で開発できないと苦しい。
電気とe-fuelの競争になるが、我々が一番望むのはe-fuelで車が動く未来。国も開発予算を付けているので、早く実用化してほしい。我々は待つしかない。
─その間に自社でできる対応は。
【中村氏】顧客を守る、あるいは顧客との絆を深めるという1点。従来からのSSとカーライフの2事業部体制では、互いがコンペチターとなって顧客を奪い合ってしまう側面があったため、両事業部をモビリティ事業部として4月から一本化した。顧客にとってのプラスに主眼を置き、「自動車のことならナカムラに全部任せよう」と言ってもらえる存在になりたい。
ガソリン車がEVに置き換わっても、車が空を飛ぶような時代になっても、その車を整備する仕事は絶対に残る。整備の仕事が他社に流れないよう、ナカムラのブランド力をさらに上げていくことが生き残りの必須条件となる。(播磨時報社)
株式会社ナカムラ
兵庫県姫路市国府寺町72
電話 079-285-2551
【公式HP】