Jリーグ加盟各クラブが社会貢献活動を行っているなか、コロナ禍でヴィッセル神戸が関わった新型コロナワクチン大規模接種会場の運営協力活動が、Jリーグから評価され、表彰を受けた。その取り組みについて、全2回にわたり伝える。1回目の今回は、わずかな期間での運営スタート、そして、1日最大で約6800回の接種を可能としたオペレーションに迫る。
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サッカー・J1のヴィッセル神戸がMFアンドレス・イニエスタ選手のゴールなどで4-0と大勝した14日のJ1第13節サガン鳥栖戦。そのノエビアスタジアム神戸でのホームゲームの直前に、あるセレモニーが行われていた。
Jリーグの取り組み『2022Jリーグシャレン!アウォーズ』の表彰式だ。加盟クラブのホームタウン・社会連携(『シャレン!』)活動の中から、とくに幅広く共有したい活動を表彰するもので、このたび、ヴィッセル神戸の『神戸市新型コロナワクチン接種会場の運営協力活動』が「パブリック賞」を受賞した。パブリック賞は、国や自治体が掲げる政策を活用し、地域の課題解決に向けて、多様なステークホルダーと連携して、持続可能な活動となるような取り組みを評価して授与される。ピッチでは活動を代表して、ヴィッセル神戸の徳山大樹社長と、協働者の1人である神戸市の久元喜造市長が、Jリーグの野々村芳和チェアマンから表彰状と記念の盾を受け取った。
コロナ禍が続く2021年、国内で求められていたのは、新型コロナワクチンの接種による予防だった。ところがなかなか接種が進まないという状況のなか、同年5月21日、神戸市、楽天ヴィッセル神戸株式会社(ヴィッセル神戸)、楽天グループ株式会社(楽天)をはじめ、医療機関や企業が連携し、スタジアムを使った新型コロナワクチン大規模接種オペレーション体制の構築をいち早く表明。10日後の5月31日にはノエビアスタジアム神戸で会場運営をスタートさせた。
その後、最大で28団体が携わり、同年12月15日に2回目の接種事業が終了するまで、1日最大約6800回、累計約36万7135回の接種を実施。のべ1万3000人以上の医療従事者が接種業務に携わったという。
なぜこのような大がかりな体制を迅速に、スムーズに実行できたのか。運営に大きな役割を果たした1人、楽天ヴィッセル神戸株式会社スタジアム本部スタジアムエンターテイメント部部長の菊地隆之さんに話を聞いた。
「考えながら走るという形で、まずはどうすれば安心・安全に運営できるかというのを念頭に置いて取り組みました」という菊地さん。会場の運営自体はサッカーの試合でのノウハウがあり、「そこまで不安というのはなかった」ようだが、発表から開始(ローンチ)まで2週間ほどだったこと、しかも、スタジアムでの医療行為という前例がほとんどないような取り組み、そして、「とにかくワクチンの接種を促進していき、どんどんリスクを下げていかなければいけないというタイミング」も重なり、業務は多忙を極めたよう。「とにかく我々も体制をしっかり作るというのを、日夜考えながらやらせていただいたという感じです」と、当初の様子を振り返る。