平安時代に後白河天皇が宮中で始めたとされる「御懺法講(おせんぼうこう)」が30日、 京都・三千院門跡(京都市左京区大原)で 執り行われた。
新型コロナウイルス感染防止のため、 2020年、2021年と2年連続で無参詣での開催だったが、今年(2022年)は感染対策を施して3年ぶりに公開された。
御懺法講は1157(保元2)年に後白河天皇が宮中の仁寿殿(じじゅうでん)で営んだのが始まりとされる。比叡山延暦寺を本山とする天台宗で最も重要な儀礼と位置づけられ、宮中法会(ほうえ)として脈々と行われてきた。しかし、明治政府の廃仏毀釈(きしゃく)や第二次世界大戦などの影響でいったん途絶え、1979(昭和54)年に京都・五ケ室門跡(※)の一つ、三千院門跡で復興された。今回で復興されて44回目となる。
毎年5月、新緑の境内に独特の旋律をつけて経文を唱える仏教音楽・声明(しょうみょう)と雅楽の調べが響きわたるこの法会は、元来、諸悪の行いを懺悔(ざんげ)し、心の中にある「貪り(むさぼり)、怒り、愚痴」の三つの毒を取り除く意味合いを持つが、今年は新型コロナウイルスの早期収束と、ロシアによるウクライナ軍事侵攻の即時停戦も祈願した。
法会は、 御所の紫宸殿を模した三千院の宸殿(しんでん)で執り行われた。本尊は伝教大師・最澄の作と伝わる秘仏の薬師如来で、2003(平成15)年、世界平和を祈願して開帳されたことがある。
導師を務める三千院の小堀光實(こぼり・こうじつ)門主らが雅楽の調べに乗せて声明を唱え、花びらをかたどった紙をまく散華(さんげ)なども行われ、約2時間の宮中法会が再現された。
仏教音楽・声明は中世ヨーロッパの典礼音楽・グレゴリオ聖歌と並び称され、近年ではコラボレーションされることも多くなった。浄瑠璃や能の源流ともされ、京都・大原は声明の聖地と称される。