世界文化遺産・比叡山延暦寺を総本山とする天台宗のトップ、第258世天台座主に就任した大樹孝啓(おおき・こうけい)師(97歳・兵庫県姫路市出身)が7日、滋賀県大津市の天台宗務庁で会見し「超高齢なのでどれだけ奉仕できるかわからないが、生ある限り最後まで精進したい」と抱負を語った。
大樹座主は2021年11月22日、森川宏映・前座主の死去に伴い、同日付で座主に就任した。天台宗務庁によると、現存する資料を基にすると、歴代最高齢での天台座主就任。1984(昭和59)年から書写山・円教寺(兵庫県姫路市)の第140世長吏(住職)を務めた。兵庫県出身で、かつ兵庫県内の天台宗寺院の住職経験者の座主就任は史上初という。
これまでに京都御所や皇居、宮内庁への就任報告、四天王寺(大阪市天王寺区)での聖徳太子十六歳孝養像や叡福寺(大阪府太子町)の聖徳太子御廟への奉告、比叡山延暦寺の諸堂参拝「御拝堂(ごはいどう)」などの諸行事や、就任を内外に披露する天台宗で最高の慶事「伝燈相承(でんとうそうじょう)式」を終え、最初の会見となった。
国内では新型コロナウイルスの感染拡大が高止まりしている。またロシアによるウクライナ侵攻が長期化の様相を見せている。このほかにもアメリカでは銃乱射事件、神戸では連続して暴力団の抗争とみられる事件が起きている。こうした状況に接し、大樹座主は「日々、心も疲れている時代」と表現し、「人々が平穏で暮らせる世界の実現」と誓った。
そのうえで最澄が残した「自分を忘れ、他人のために尽くす」という意味の言葉 「忘己利他(もうこりた)」を挙げ、「これが慈悲の極みであり、優れた仏の知恵に近づくことができる。難しく考えるのではなく、相手のことを考える、思いやる心を持てば、自然と親切心は伝わるのではないか」と語った。