「IDDM(Insulin Dependent Diabetes Mellitus)」をご存じだろうか。先天性ではなく、主に自己免疫の暴走によっておこる病気で、Ⅰ型糖尿病として分類されることも多く、国内の糖尿病患者の1割が該当するといわれている。1日に4~6回程度の注射や持続的なポンプによるインスリン注入が必要で、外出先で心もとなさを覚える人も少なくないという。
そんなIDDMを抱える人が安心して利用できるカフェが兵庫県神戸市にある。元看護師のオーナー・遠山朋美さんが開いた「IDDMカフェ」だ。
遠山さんは、2019年にⅠ型糖尿病を発症。自身の病気と付き合っていくうち、誤った情報による世の中の偏見や矛盾が見えてきたという。
その一つがインスリン注射。最も「清潔操作」が必要な場面であるにもかかわらず、外出先では、多くの患者がトイレで済ませているのが現実だ。
また、すべての糖尿病が「生活習慣病」であるとの誤った認識が広がっており、甘いものを食べていると「そんなの食べるから病気になるのよ」と、心ない言葉をかけられることも……。特にⅠ型は、自ら血糖コントロールを行わなければならず、低血糖・高血糖いずれの状態も命の危機と隣り合わせ。必要なタイミングで「糖」を補給する必要がある、ということがあまり知られていない。
「IDDMについて共感しあえる人たちとの“出会いの場”が必要」と感じた遠山さん。同じ思いを持つ人々の声に支えられ、2021年、神戸市兵庫区に「IDDMカフェ」をオープンした。
店内には、インスリンを打ったり、具合が悪くなったときに休んだりできるよう、ロールカーテン付きのソファベッドを設けている。椅子も、インスリンポンプのチューブが引っかかりにくい仕様になっている。
また、全メニューに糖質量を明記。自身で必要な糖分を計算できる。
さらに行き届いた配慮もある。