フランス・パリで6月6日に行われた2022年度の日本酒品評会『KURA MASTER(クラ・マスター)』で、山陽盃酒造株式会社(兵庫県宍粟市山崎町)の「播州一献 純米大吟醸 山田錦」が純米大吟醸部門で優秀賞にあたる「プラチナ賞」を受賞した。
KURA MASTERは、2017年からフランスで開催されているフランス人のための日本酒コンクール。審査員は、フランス国家が最高職人の資格を証明する国家最優秀職人章(MOF)の保有者をはじめ、フランスの一流ホテルのトップソムリエやバーマン、カービスト (ワイン醸造所などで、購入者にテイスティングでのアドバイスを行う) のほか、レストラン、ホテル、料理学校関係者など飲食業界のプロフェッショナルで構成される。
山陽盃酒造は江戸末期、1837(天保8)年に宍粟市で創業した老舗の酒造会社。1987(昭和62)年に閉山した兵庫県養父市大屋町の旧明延(あけのべ)鉱山の坑道に、関西唯一の鉱山内での日本酒貯蔵庫「明寿蔵(めいじゅくら)」を所有し、日本酒を熟成させている。
鉱山内は遮光性に優れていることから、四季を通じて12℃前後の一定の温度に保たれ、酒自体にストレスがかからないという。
こうして地酒造りの伝統をつむぐ山陽盃酒造にとって、大きな出来事が起きた。2018年11月、築180年の蔵が火災で全焼し、約1500平方メートルが焼失して製造が一時中断した。幸いにも酒造タンクがある仕込み蔵の被害が軽く、焼け残った柱・梁・外壁などを再利用し、見慣れた以前の姿へと再建が完了した。
2020年4月には新設した直売所がオープン、2021年醸造年度からは、新しい酒蔵(原料処理施設)とリニューアルした仕込み蔵で酒造りができるようになった。
山陽盃酒造の杜氏、壺阪雄一専務は「火災のダメージは大きかったが、地元の恵まれた環境と多くの方々の応援で、酒造りできる喜びを改めて感じた」と話す。
2020(令和2)年12月、宍粟市をはじめ、兵庫県内にあるりんご園のりんごを使ってお酒を作る、初めての試みでりんごのお酒「CIDRE RonRon(シードルロンロン)」の開発を始めたのは、こうしたことがきっかけだった。