【中将】 一度使いだすとなかなか中毒から抜けられないそうですね……仕事のストレスやプレッシャーが使い始めたきっかけだそうですが、人気者だった田代さんがまさかその後20年以上も逮捕、逮捕の人生になるとは思いもしませんでした。
でも、たしかにたぐいまれな才能を持った人なので、そこはこの機会にちゃんと再評価しておきたいです。特にシャネルズ、ラッツ&スターで発揮した音楽的才能は日本のポップス史を語る上でも無視できないと思います。
【橋本】 シャネルズってどんなグループだったんですか?
【中将】 シャネルズは1950年代から1970年代のR&B、ソウルの影響を強く受けたドゥーワップ(黒人音楽をルーツとしたコーラススタイル)グループです。ブラックミュージックに憧れる東京・大森の青年たちによって結成されたグループで、鈴木雅之さんや田代さんらセンターのボーカル陣は顔を黒く塗って歌っていました。ファーストアルバムの「Mr.ブラック」(1980)では影響を受けた洋楽をいくつかカバーしているんですが、特にザ・コースターズの「BAD BLOOD」は本家をしのぐ魅力があると思います。
【橋本】 すごく音圧のあるコーラスでかっこいいですね!
【中将】 本格的なんだけど独特のユーモラスさも散りばめられてますよね。彼らのセンスはデビュー前から音楽ファンの間で評判になっていて、大瀧詠一さんや山下達郎さんもライブに足を運んでいたそうです。
【橋本】 すごいですね……。ちなみに「BAD BLOOD」ってインパクト強いタイトルですが、どんな意味なんでしょうか?
【中将】 端的に言うと「この女は一族ことごとくクソだぜ!」みたいな感じですね(笑)。ちょっと荒っぽいですが……。
【橋本】 なるほど、ブラックですね(笑)。
【中将】 シャネルズは作家に提供された曲も多いんですが、こういった音楽性を基にメンバーでも楽曲を自作していて、田代さんは作詞担当として才能を発揮しました。中でも「憧れのスレンダーガール」(1982)は名曲だと思います。
【橋本】 めっちゃ爽やかで素敵な曲ですね!