神戸市東灘区の市立六甲アイランド高校で2017年12月、当時1年の男子生徒(のちに転校・現在20歳)が長時間にわたる教諭らによる別室での指導後に校舎から飛び降り、一時重体になった問題で、元生徒側が神戸市や市教育委員会に謝罪や補償を求めて民事調停していたが、成立しなかったため、24日、市などを相手に約6000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。
神戸市教育委の第三者委員会は2019年12月、同級生とのトラブルをめぐり、教員がこの生徒を2日間で計16時間もの間、別室に隔離して指導したと結論付け、「元生徒を精神的に追い詰める不適切な指導があり、威圧的なあり方が自殺を決意させた」との調査報告書をまとめた。代理人弁護士によると、元生徒は脚に後遺障害が残るなどしているという。
訴状によると、元生徒は同級生に対するいじめについて教師から追及を受けた。この教師は元生徒が勝手に室外に出ることのないように監視しながら執拗に、自らが行った行為を認めて反省するよう求め、退学について示唆したとしている。
神戸市内で会見した代理人弁護士によると、神戸市は調停の際、調査報告書は指導が違法とまでは言っておらず、教師が元生徒に退学を告げた事実も認めず、「強く争う」と主張したという。
原告が飛び降りを決断したのは、長時間にわたる別室での指導や、実際にはあり得ない退学等の厳しい処分を示唆するという違法な指導を行ったことが原因だったと指摘、飛び降り事故との間に因果関係があるとした。
また「指導に当たった教員は、『退学』という言葉を用いたことを否定しているが、『年次指導で終わらない』との発言が繰り返しなされたこととが、生徒には『退学になるのでは』と思わせる不適切な発言だった」と指摘している。
また、当時まじめで温厚な性格で、処分歴も全くなかった元生徒に対して退学になると思わせる言動を取った教員は、原告が将来を悲観し、飛び降り自殺などの衝動的な行為に走ることは、教育や生徒指導の専門家として、容易に知り得たはずで、知らねばならないと「指導」を行った教師は、元生徒の飛び降り行為を予測可能であったし、予測しなければならないと主張している。
提訴を受け神戸市教委・児童生徒課は「訴状が届いていないのでコメントすることはできないが、引き続き誠実に対応していく」としている。