【中将】 さて、次は大阪・ミナミの曲を紹介します。海原千里・万里の「大阪ラプソディー」(1976)。千里さんはご存じの通り、今の上沼恵美子さんですね。
【橋本】 えっ! 曲は知ってましたけど、これが上沼さんなんですね!
【準子ママ】 やっぱりお若いなァ(笑)。上沼さんはもともと、お姉ちゃんの万里さんと一緒に漫才や歌をやってはったんです。
【中将】 女性の漫才師自体が少ない時代に10代で全国区のスターになって、歌も売れたわけだからすごいですよね。
曲自体は若いカップルが道頓堀や法善寺といったミナミの名所をデートする内容なんですが、藤山一郎さんの大ヒット曲「東京ラプソディ」(1936)を大阪バージョンで焼き直したような感じです。歌謡曲タッチなんだけど勢いを感じますね。
【橋本】 お上手だし、めちゃくちゃ色っぽさも感じます。
【中将】 キタとミナミの曲を続けてご紹介しましたが、次はキタからミナミに歩く曲です。欧陽菲菲「雨の御堂筋」(1971)。
【準子ママ】 すごく流行りましたし、欧陽菲菲さんの髪型も話題になってました。スズメの巣が爆発したみたいな(笑)。
【中将】 女性が好きな人を追って、梅田新道から本町、心斎橋まで大雨が降る中を歩く……という内容ですが、3Km近くあるので、歩く人はまずいないですね。
【準子ママ】 地下鉄やタクシーに乗るお金なかったんやろな(笑)。歌詞書いた人はわからんかったんやろけど、大阪の人にとったら、このキタからミナミまで歩くのは奇抜な発想やね。
【中将】 この曲の歌詞を書いた林春生さんもそうですが、これまでご紹介した曲の作詞家ってみんな東京の人なんですよね。大阪で飲んだことくらいはあっただろうけど、そこまで土地勘はない感じが伝わってきます。結果的にヒットしてるからいいんですけど。
【準子ママ】 東京の人やから逆に抵抗なく大阪の目抜き通りや名所の名前をポンポン出していけるんやろね。
【橋本】 でも全国区のヒット曲に知ってる大阪の地名が出てくると、関西人としてうれしくなっちゃいますね。誇らしさすら感じます(笑)。
【中将】 さて、これまでご紹介した曲は歌謡曲でしたが、昭和にはロックなど若者の音楽シーンでも大阪をテーマにした曲が多数生まれています。代表的なのは桑名正博さんらが在籍したファニー・カンパニーの「スウィート・ホーム大阪」(1972)でしょうか。
【橋本】 めちゃいいですね! カッコいい!
【準子ママ】 私は詳しくないジャンルやけど「雨の御堂筋」とほぼ同時代に、もうこんな音楽が存在してたんですね。
【中将】 当時のロックシーンでは、矢沢永吉さんらのキャロルとファニー・カンパニーが人気を二分し、「東のキャロル、西のファニーカンパニー」と言われていたそうです。
この曲にしたって全編ディープな関西弁で歌ってるけど、今でも古びないスマートなセンスを感じますよね。当時の大阪ではロック、フォーク、ブルースなどの音楽シーンが盛り上がっていて、桑名さんのように全国区へと羽ばたいていく人がたくさん登場しました。