保険適用範囲拡大 がんの『粒子線治療』 施設の広さが「甲子園球場グラウンド」ほどもあるワケ | ラジトピ ラジオ関西トピックス

保険適用範囲拡大 がんの『粒子線治療』 施設の広さが「甲子園球場グラウンド」ほどもあるワケ

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 公的医療保険の対象が2022年春から拡大し、ますます注目されているがんの粒子線治療。この粒子線治療が受けられる施設の一つ、兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)の敷地は広く、甲子園球場のグラウンドと同じくらいの大きさがあるという。なぜそれほどまでの広大な敷地が必要だったのかなど、同医療センターで院長を務める沖本智昭さんに話を聞いた。

上空からの全景(提供:兵庫県立粒子線医療センタ-)

 いま粒子線治療が注目度を高めているのは、エックス線よりも粒子線の方ががん細胞のDNAを切断する能力が高いため。エックス線で歯が立たないものでも、粒子線では治療できる可能性がある。また、粒子線は人間の体の中で止まることから、正常な組織・臓器の放射線障害を減らすことができ、副作用が少ないという。

治療の様子(提供:兵庫県立粒子線医療センタ-)

 日本では20数年前から導入されていて、これまでに数万人の人が治療を受けている。その治療成績や副作用を一例一例検証した結果、理論上だけではなく、実際の成果としてもエックス線と比べて安全性が高いというデータが出た。このデータを厚生労働省に示して、認められた結果、公的医療保険の対象となった。

 現在、粒子線治療を受けられる施設は全国に25ほど。沖本さんは、「『先進医療』という枠組の(中に入っていた)際には、工夫があまりできず、決まったやり方できっちりと治療を行って安全性を示さないといけなかった。ところが保険診療になると、粒子線を当てる強さや回数の増減ができるなどバリエーションが豊富になる。これからさらに発展していけると思います」と展望する。

 保険適用範囲が拡大し、がん治療に多くのメリットがある粒子線治療。それにもかかわらず施設数が限られているのは、高額なハイテク装置が必要となるから。というのも、粒子線治療に活用される「陽子線」や「重粒子線」は、つくり出しただけでは治療の役に立たず、光速近くにまで加速させなければいけない。

 そこで使われるのが「シンクロトロン」と呼ばれる、直径26メートルの巨大装置だ。粒子線はこの周囲を加速しながら、1秒間に100万周も進み、光の速さの70%にあたる秒速18万キロメートルまで加速したうえで、患者の患部に照射される。

提供:兵庫県立粒子線医療センタ-
巨大な「シンクロトロン」(提供:兵庫県立粒子線医療センタ-)

 甲子園のグラウンドと同じ大きさの面積が要るのは、シンクロトロンを含む、とてつもなく大きな治療装置を設置するためだという。

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