2022年時点でスイスで最も多く使われている言語はドイツ語で、その次がフランス語圏になります。そしてスイス時計ブランドの多くが、このフランス語圏の地域に集中していることが特徴です。
この要因は、前述したユグノー戦争が大きく影響していると考えられます。フランス語を言語とする彼らが大挙して越境してきた事で現在のスイス時計界が作られたのでしょう。現在もフランスやドイツからスイスへ時計職人たちが出勤のため越境しています。
◆腕時計の歴史を知ると人類発展の軌跡が見えてくる
腕時計は、もともとは懐中時計を腕に巻き、現代の腕時計へと変化して来ました。腕時計になった理由は航空用として、それらは更に潜水用、そして宇宙空間向けというように人類の歴史に関連して用途や形態も変化していきます。
ユグノー戦争によってすぐには飛躍的に発展しなかったスイス時計ですが、18世紀に入るとユグノーたちが入植した地域で現在のブランパン、ヴァシュロン・コンスタンタンといったブランドが次々に発祥します。
フランスやドイツで自然発生した時計技術はスイスのジュネーブに古くから伝わる伝統的な宝飾細工の技術と融合して、後に私たちが知るブランドへと繋がるのです。スイス時計ブランドはその後ヨーロッパの主要都市からの需要を受けて大きく発展します。
腕時計の歴史を調べると人類の歴史とも深く関わっていることがわかります。ぜひ皆さんも手にしているスイス時計の歴史を振り返ってみてください。これまでの英知の結集、人類の歴史がわかるかもしれません。
(ラジオ関西Podcast『やさしい腕時計』 #5『なぜ高級時計はスイス製が多いのか? 教科書で習う「あの出来事」が関係!』より)