田園と山々に囲まれる兵庫県多可郡多可町は、“日本一の酒米”と称される「山田錦」誕生の地として知られています。
そんな、自然に恵まれた地域で1828年から農業を営み、主ににんにくの栽培・黒にんにくの加工をおこなうのが「藤岡農場」。同農場の7代目で、兼業農家だった父から農場を引き継いだのが、藤岡啓志郎さん(28歳)です。2019年2月には「株式会社AgLiBright(屋号:七代目藤岡農場)」を設立しました。
今でこそ「最高の農産物」づくりに力を注ぐ藤岡さんですが、学生時代は農業とかけ離れた分野を学んでいたそうです。
「学生時代は予防医学に興味を持ち、病気になってから薬で治すよりも、病気になる前に防ぐことはできないかと考えるように。当時は、企業に入って医薬品や化粧品を作るつもりでした。しかし、活性酸素や予防医学の勉強をするうち、原点である『食』にたどり着き、『体に良いものをつくりたい!』という思いが芽生えました」(藤岡さん)
新たな目標を定めた藤岡さんは、まず農業施設に向かい、研修に参加。さらに、アメリカ・カルフォルニアに渡って農業や作物について学びます。みっちりと知識と経験を積んで帰国した藤岡さんは、「体に良い作物である“にんにく”の生産に携わりたい」という思いを強め、実家を継ぎ、起業することを決めました。
「実家を継ぐことによる難しさは、正直あまり感じませんでした。しかし、野菜を作ること・売ることの難しさは感じましたね(笑)。 農業者として当たり前のことですが、恥ずかしながら、この当たり前をこなしていくことですら困難で。今でも感じていますし、これから先も同じように思うのではないかと」(藤岡さん)
藤岡さんは、農繁期なら一日中外で作業をし、トラクターに乗っていることが多いとか。それ以外にも肥料散布、除草、水管理、さらに閑散期は事務作業や営業など、やるべき仕事はたくさん。もちろん苦労も伴うものの「農業の楽しさはたくさんありますね」と語ります。
「植物は日々顔が変わりますし、肥料を与えた後の葉っぱの色の変化は顕著に表れます。自ら種をまいた野菜が育っていく過程を見ることですら楽しいですね。愛情込めて育てた作物が消費者のもとに届き『おいしい!』と言ってもらえることもやりがいにつながります」(藤岡さん)
そんな藤岡さん。とある出会いが、今のライフワークにつながっているといいます。