林歳彦氏(会社経営者・環境活動家)と、フリーアナウンサーの田中大貴(元フジテレビアナウンサー)がパーソナリティーを務めるラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』。2022年7月25日放送回には、認定NPO法人「ココロのバリアフリー計画」の理事長・池田君江さんがゲストとして登場。“ココロのバリアフリー計画”の取り組み内容や、自身の経験、今後への思いなどについて語った。
「誰もが心地よく安心して外出ができること、そして困っている人がいれば声を掛けられること。そんな世の中を目指して」、2013年10月に認定NPO法人「ココロのバリアフリー計画」を設立した池田さん。
バリアかバリアフリーか、ということだけではなく、“優しい”お店や場所を広めたいという思いで、現在は「ココロのバリアフリー応援店検索サイト」というサイトの運営を行っている。
同サイトでは、「ココロのバリアフリー計画」に加盟している店舗や場所を検索することができ、「入口の段差は何段あるか」「入口やトイレの幅はどれくらいか」「扉は内開きか外開きか」「手すりはあるか」などの情報が掲載されている。
このサイトを始めるきっかけは、池田さん自身の経験が関係している。
「私は、2007年6月に起きた事故で車いす生活をすることになりました。もともと出かけるのが大好きだったので、車いす生活になってからも外には出ていたんですが(車いすだと)断られたり、バリアフリーのお店なのに『他のお客様のご迷惑になりますので』と言われたり…それでだんだんと外に出るのが怖くなって、引きこもりがちになってしまったんです」
そのように、初めて“バリア”にぶつかったときのことを振り返る池田さんだが、その後、様々な人との出会いを経て再び外出をするようになり、そこであるうれしい体験があったという。
「ある串揚げの店に家族で行ったときのことなんですけど、オーナーの方に『車いすでも入れますか?』って聞いたんです。そしたら『これまで一度も車いすのお客さんが来たことはないんだけど、どう手伝えばいい?』って聞いてくれて、その後アルバイトの子とオーナーさんが車いすを担いで段差をのぼらせてくれたんです。それだけでなく、中にいるお客さんにも声をかけてテーブルを動かしてくれて……。そのとき、『バリアフリーを掲げていなくても、こんなに優しいお店があるんだ』って気付いたんです。それから、私たちが帰るときにオーナーさんが『これくらいのお手伝いで良いならまた来てください』って言ってくれて、その言葉がすごくうれしかったんです」(池田さん)
そういった出来事をきっかけにスタートした「ココロのバリアフリー計画」。今はサイト運営だけでなく、「シェアスロープ」という取り組みも行っている。
「段差に板を乗せて坂にするスロープなんですが、駅などで見た人は多いんじゃないでしょうか。このスロープがあれば(車いすでも)段差のあるお店に入れるんですが、1店舗に1つあっても、毎日のように車いすのお客さんが来るかといえばそうでもないですよね。でも地域に1つスロープがあれば、それを地域の人たちでシェアできれば、『優しい街』になるんじゃないかと。そう思って今年の1月からスタートさせた活動が『シェアスロープ』です」(池田さん)
このような活動を積極的に行っている池田さんだが、自身が車いす生活を始めた当初はどのような思いを抱いていたのだろうか。
「ちょうど中学生になったばかりの娘がいたんですが、自分より娘が落ち込まないかという心配の方が強かったです。まだまだいろんな所へ一緒に行きたいし、学校行事もあるし……落ち込んではいられない、という気持ちの方が大きかったですね」
そして池田さんは、「車いすにならないと分からないこともありましたし、車いすにならないと出会えない人もいましたし、今はこの活動が自分の使命だと思っています」と、前を向いていた。