戦後の混乱、家族を養うため…過酷な人生を歌った昭和の”貧困ソング”たち | ラジトピ ラジオ関西トピックス

戦後の混乱、家族を養うため…過酷な人生を歌った昭和の”貧困ソング”たち

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 戦争に敗れ、焼け跡からの過酷な再出発を強いられた戦後の日本。流行歌にも貧しさがテーマになったものが多くありました。「星の流れに」「ヨイトマケの唄」……深刻な背景のはずなのになぜか魅力あふれる楽曲たちについて、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。

背景を想像できますか?昭和の過酷な生活に中で生まれた貧困ソングたち…(イメージ画像)

【中将タカノリ(以下「中将」)】 今回のテーマは「昭和の貧困ソング」。現代も不景気だとか格差社会だとか言いますが、やっぱり戦後のほうが格段に貧しい時代でした。

【橋本菜津美(以下「橋本」)】 終戦後の焼け跡でイチからのやり直しですもんね……今からは想像もつかないけど大変な時代だったんだと思います。

【中将】 毎月の支払いに困るとか消費者金融にお金借りるとかそんなレベルの貧しさじゃないですよね。今日食べるものを得るためになんでもしなくちゃならない……1947年に菊池章子さんが歌い大ヒットした「星の流れに」はまさしくそんな極限の状況におちいってしまった女性の歌です。

 作詞家の清水みのるさんが企画した曲ですが、ある時、新聞に載った女性の手記が楽曲制作のきっかけになりました。手記の内容は、従軍看護婦として満州で働いていた女性が戦後日本に戻ったが、家も家族も失い、生きるために娼婦になったというもの。戦争への怒りや、やるせない思いをぶつけた告発歌なんですね。「こんな女に誰がした」というフレーズが刺さります。

【橋本】 これは重いテーマですね……戦争によって人生を狂わされてしまったしまったんですね……。従軍看護婦だってつらい仕事だったろうに、戦争が終わって帰ってきたら次は……涙が出ますがこの曲は素晴らしいと思います。

【中将】 今もウクライナでは戦争が起こっていますが、きっとこの曲の女性みたいに人生を狂わされてしまったという人がたくさんいるのだと思います。本当に悲しいです。

 発表された時代は少し後になるけど、三輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」(1965)も戦後の貧困を歌った楽曲です。幼なじみのお母さんを回想して作ったということですが、どういうわけか夫がいなくなり、作業員として子どもを立派に育てあげたという女性のストーリーですね。

【橋本】 これも貧困ソングではあるんですが、悲惨な状況の中でもどうにか生きていこうとした女性の力強さを感じますよね。

【中将】 子どもは大人になって立派なエンジニアになるんだけど、その時にはもう女性はこの世にいない……この時代ならではの力強さと悲しみがありますね。

 この曲は「肉体労働者への差別心をあおる」みたいな理由で放送業界団体によって「放送禁止歌」扱いされた時期があったんだけど、今はそういう放送禁止歌というシステム自体が消滅して自由にオンエアできるようになりました。2012年の「NHK紅白歌合戦」で三輪さんが披露したのも話題になりましたよね。こういう時代のリアルを歌った曲こそ時代を超えて伝えていかなければと思います。

【橋本】 私も当時の紅白を観て感動してました!

【中将】 次に紹介する曲は1973年にかぐや姫が発表した「神田川」。戦争から30年近くたってさすがに極限の貧しさからは脱出できていた時代ですが、それでも今に比べると住環境も悪いし、経済的に苦労している若者はたくさんいました。

【橋本】 ちょっと大学時代を思い出します。私も大学の時はお金がなくて、コンビニで買ったおでんの汁を彼氏とわけあったりしてました(笑)。


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中将タカノリ 橋本菜津美の 昭和卍パラダイス | ラジオ関西 | 2022/07/31/日 27:00-27:30

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